「リフォーム工事の前にアスベスト事前調査は必要?」「リフォーム工事でアスベストが含まれていると分かったら?」など、アスベストに関する悩みを抱えている人も多いでしょう。この記事では、アスベスト事前調査の流れや、アスベストの含有が分かった場合の対処法などを解説しています。補助金に関する情報も紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。
アスベスト(石綿)とは?
アスベストとは、世界各地で産出される天然の鉱物です。別名「石綿」とも呼ばれ、繊維状の見た目が特徴です。丈夫で、耐熱性、耐酸性、耐摩擦性などが高いため、建築現場で重宝されていました。健康への被害が問題視される前は、ほとんどの建築物にアスベストが使用されていたと言っても過言ではありません。様々な用途に使いやすく、価格も安いことから「奇跡の鉱物」とも呼ばれていました。
アスベストのレベル
アスベストには発じん性(粉じんの飛散性)によって1〜3のレベルが設けられています。レベル1のアスベストが最も危険で、除去作業をするときには厳重な対策が必要です。
レベル1
レベル1のアスベストは発じん性が高く、最も危険です。レベル1の建材は、アスベストとセメントを混ぜ、建築物に吹付けた「石綿含有吹付け材」が代表的です。主に、耐火建築物の柱や、立体駐車場の天井や壁、エレベーター周りに使用されています。アスベストの濃度が高いため、除去作業の際は粉じんが大量に飛散するリスクがあります。そのため、作業前に届出を行った上で、防護服や防塵マスクを付けて作業しなければなりません。
レベル2
レベル2のアスベストはレベル1よりも飛散リスクは少ないものの、状態によっては大量に飛散する恐れがあります。レベル2の建材は、シート状で配管などに巻きつけられた「石綿含有保温材・断熱材」が代表的です。主に、ボイラーや配管、建築物の柱に使用されています。アスベストの密度が低く軽いものが多いため、風に乗って飛散しやすいです。除去を行うときはレベル1と同様に届出を提出し、防護具をつけて作業を行います。
レベル3
レベル3のアスベストは、レベル1とレベル2に比べて発じん性が比較的低いです。レベル1、レベル2に該当しない建材は全てレベル3に分類されます。主に、屋根材や外壁材、天井、床などに使用されている板材が該当します。除去を行う際は、厳重な飛散対策は不要で、簡易的な対策で作業可能です。とは言え、作業員自身の健康はもちろん、近隣住民にもきちんと配慮をしながら、慎重に作業する必要があります。
アスベストが問題視されている理由
アスベストは繊維状の鉱物で、一つ一つの繊維が非常に細いです。空気中に飛散しているアスベストを吸引してしまうと、肺などに刺さりやすく、さらに酸に強いことから体内に残留してしまいます。体内に留まったアスベストによって、石綿肺や肺がん、悪性中皮腫などの病気を引き起こす可能性があると分かってからは、アスベスト=危険なもの、という認識が広がっていきました。これらの病気は潜伏期間が長いため、知らず知らずのうちに病状が進行する恐れがあります。病気に気付いたときには手遅れだった、というケースもあるため、過去にアスベストを扱う仕事に従事していた場合は、定期的に健康診断を受けるなど早期発見に努めることが大切です。
2022年4月の法改正によりリフォーム工事前のアスベスト調査が義務化になりました
2022年4月に大気汚染防止法が改正され、リフォーム工事前にアスベスト調査を実施し、結果を報告することが義務付けられました。アスベスト調査・結果報告の対象になるのは、以下の条件を満たすリフォーム工事です。
- 対象の床面積が80㎡以上の解体工事
- 請負金額の合計が100万円以上の改修工事
もしアスベストが含有されていなかった場合でも、調査結果は必ず労働基準監督署に報告しなければなりません。調査結果の報告を怠った場合は、30万円以下の罰則が科せられます。漏れのないよう、業者とコミュニケーションを取りながらアスベスト調査を行いましょう。
リフォーム工事のアスベスト調査費用はだれが負担する?
アスベスト調査の費用、アスベストの除去費用は、基本的に施主が負担します。リフォームを検討するときは、リフォーム代に加えてアスベストの調査・除去費用が発生することを頭に入れておきましょう。アスベスト調査の際は、設計図などの情報提供、現場での写真撮影・保存の許可などを求められることがあります。戸惑うこともあるかもしれませんが、安全に調査を進めるためにも速やかに対応しましょう。
アスベストが含有されていると分かった場合はどうなる?
事前調査でアスベストが含有されていると分かったら、その後どのような流れでリフォームを進めたらよいのでしょうか。ここでは、アスベスト事前調査後の流れを解説します。
アスベストの飛散防止対策工事が必要
リフォームしたい建物にアスベストが含まれていた場合は、飛散防止の対策工事をしなければなりません。飛散防止工事には主に「除去工事」「封じ込め工法」「囲い込み工法」の3つの種類があり、建物の状態によっていずれかの方法で工事を行います。どのような場合にどの工法が採用されるのか、それぞれの特徴を確認しておきましょう。
除去工事
除去工事とは、アスベストが使われている建材を全て取り除く工事です。飛散性の高いアスベストが使われている場合や解体工事を行う際には必須の作業です。非アスベストの建材と入れ替えるため、今後のアスベストの心配はなくなります。ただし、次に紹介する封じ込め工法、囲い込み工法よりも作業費用が高くなり、作業時間も長くなりやすいです。
封じ込め工法
封じ込め工法とは、アスベストに溶剤を吹きかけて固め、アスベストが飛散しないようにする工法です。飛散性が比較的低い、もしくは解体の予定がない場合は封じ込め工法が採用されることが多いです。除去工事よりも作業時間が短く、費用も安くなるでしょう。ただし、定期的にアスベストの点検を行う必要があります。
囲い込み工法
囲い込み工法とは、アスベストの外側に板材などを取り付けて密封し、アスベストの飛散を防ぐ工法です。封じ込め工法と同じく飛散性が低い、もしくは解体の予定がない場合に採用されることが多いです。封じ込め工法よりも作業スペースが必要となるため、どちらを採用するかは作業員と相談する必要があります。除去工事より作業時間が短く、費用も安くなりやすいですが、封じ込め工法と同様に定期的な点検が必要です。
工期が伸びる可能性が高い
建物にアスベストが含有されていた場合は、リフォームに取り掛かる前にアスベスト飛散防止対策工事が必要なため、工期が伸びる可能性が高いです。特に除去工事を行うとなると、規模によっては1ヶ月以上伸びることもあるでしょう。「この日までにリフォームを完成させたい」という強い希望がある場合は、余裕をもって準備を進めるのがおすすめです。
工事費用が増える
アスベスト飛散防止対策の工事には、リフォームとは別に費用がかかってしまいます。金額は、工事の方法や除去面積、アスベストのレベルにもよりますが、1〜8.5万円/㎡と高額になるケースも多いです。リフォームをするときは、アスベストの調査・工事費用が必要になる可能性があることを念頭に置いておきましょう。
アスベストの事前調査の流れ
アスベストの事前調査は「書面調査」「目視調査(現地調査)」「分析調査」の流れで行われます。それぞれどのように調査を行うのか、詳細を見ていきましょう
書面調査
書面調査では、建物の設計図や施工図を元にアスベストが含まれているかを確認します。建築された年代や使われている建材の品番を元に正確に判断を行います。
目視調査(現地調査)
書面調査でアスベストの有無が判断できなかった場合は、実際に建築物を見て調査を行う目視調査(現地調査)を実施します。資料だけでは確認が難しい下地などもしっかりチェックしなければなりません。
分析調査
目視調査を行ってもアスベストの有無がはっきりしないときは、建材の一部を持ち帰り、分析調査を行います。分析調査には「定性分析」と「定量分析」があります。
定性分析
定性分析は、アスベストの有無を調査する分析方法です。基本的には定性分析でアスベストの有無が分かった場合は、定量分析を行う必要はありません。定性分析には「JIS A 1481-1」と「JIS A 1481-2」という規格があり、基本的には「JIS A 1481-1」で調査されることが多いです。
定量分析
定量分析は、アスベストの濃度を調べる分析方法です。アスベストの含有量を知りたいときは、定量分析まで実施することもあります。
調査報告書の作成
調査が終わった後は、アスベストの有無に関わらず報告書を作成しなければなりません。報告書には「どこに・どれくらい・どの種類の」アスベストが検出されたかを細かく記載します。この報告書は3年間保存するように義務付けられています。
リフォーム工事のアスベストに関する補助金はある?
自治体によっては、アスベストを除去する際に利用できる補助金制度が設けられていることがあります。詳しい条件や補助金額に関しては、自治体のホームページや窓口で確認しましょう。工事が始まってからでは利用できないケースもあるため、補助金を利用したい場合は早めに相談しておくのがおすすめです。
まとめ
アスベストは繊維状の鉱物で、汎用性が高く、様々な建築物に使用されていました。ただしアスベストを長期に渡って吸引すると、健康に悪影響がある恐れがあり、現在は全面的に使用が中止されています。アスベストは危険度によって1〜3のレベルに分けられており、リフォームや解体の際には、レベルごとに対処が必要です。
リフォームしたい建物にアスベストが含まれているかどうかは「アスベスト事前調査」を行い判断します。この事前調査は2022年4月より義務化されており、もしアスベストの含有が分かった場合は、除去工事、封じ込め工法、囲い込み工法のいずれかを行ってアスベストの飛散を防がなければなりません。
事前調査は「書面調査」「目視調査(現地調査)」「分析調査」の順に行われ、最後に調査報告書を作成します。自治体によっては補助金が利用できることもあるため、ホームページや窓口で確認するのがおすすめです。