アスベスト調査は、建物の解体や改修の際に必要な調査です。アスベスト調査にはどのくらいの費用がかかるのか、費用は誰が払うことになるのか気になっている人も多いでしょう。本記事では、アスベスト調査の費用相場や支払いについて、費用を安く抑える方法を解説します。アスベスト調査を依頼する業者の選び方も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
アスベストの調査の必要性
そもそも、なぜアスベスト調査をする必要があるのでしょうか。アスベストはこれまで、断熱や防音などの目的で多くの建築物に使われてきました。しかし、アスベストによって健康被害が生じることが明らかになり、現在は使用が中止されています。ただし、建物を解体する際にはアスベストが飛散する恐れがあり、十分に配慮しなければなりません。解体の際のアスベスト調査は法律によって義務付けられており、調査結果を都道府県等に報告する必要があります。アスベスト調査は、人々の健康を守るために重要な調査です。
アスベストの調査費用は誰が払うの?
アスベスト調査の費用は、基本的には建物の所有者が負担することが多いです。ただし、場合によっては他の関係者が負担するケースもあり、必ずしも所有者が負担するとは限りません。例えば、自身が所有・使用している建物か、自身が所有・貸出している建物かによっても支払い主が違ってくることがあります。全額負担ではなく、費用を分担して支払う場合もあるかもしれません。誰がアスベスト調査の費用を払うかについては、調査を行う前にしっかり確認しておきましょう。
アスベスト調査の流れ
アスベスト調査は、事前調査、分析調査、報告書の作成の流れで行われます。実際に調査を行うのは調査員ですが、依頼主側も流れを知っておくとよりスムーズに調査が進むでしょう。ここでは、それぞれの調査と報告までの一連の流れを詳しく見ていきます。
1.事前調査
事前調査とは、工事の前にアスベストの有無を確認する調査です。事前調査には設計図等の書面でアスベストの有無を確認する「図面調査」と、実際に現場に足を運んで建物をチェックする「目視調査」があります。図面調査では、使用された建材や建築方法を確認し、アスベストが含まれていないかを見極めます。しかし、図面だけでは分からない部分も多いため、目視調査で設計図との相違がないかを目で見て確認します。両方の調査によって、アスベストの見逃しを防ぎます。
2.分析調査
分析調査とは、建材の一部を持ち帰りアスベストの有無を調べる調査です。目視ではアスベストの有無を判断できないこともあるため、分析調査によってより確実性を高めます。分析調査には「定性分析」と「定量分析」があり、まず「定性分析」でアスベストの有無を調べ、その後「定量分析」で含有量を調べます。定性分析でアスベストが含有されていないと分かった場合は、定量分析を行う必要はありません。
3.報告書の作成
アスベスト調査を行った業者は、アスベストの有無に関わらず報告書を作成する必要があります。報告書には調査の概要や写真、分析した検体の一覧表などを明記します。解体業者は報告書を元に解体を進めることになるため、正しい内容を速やかに報告しなければなりません。もし調査の報告を怠った場合、大気汚染防止法によって30万円以下の罰金が科せられます。
アスベスト調査の費用相場と内訳
先述したように、アスベスト調査は図面調査、目視調査、分析調査の順に行われます。費用相場は約7〜13万円です。ただし、分析方法や検体数によって相場より費用が高くなることもあります。費用相場の内訳は以下の表のようになっています。
内訳 | 費用相場 |
図面調査 | 約2~3万円 |
目視調査 | 約2~5万円 |
分析調査 | 約3~6万円/1検体 |
図面調査
設計図や仕様書などを確認する「図面調査」の費用相場は、約2〜3万円です。事前調査の第一段階として必須の調査のため、必ず費用が発生します。
目視調査
現地で建物の状態やアスベストが含まれていそうな箇所を確認する「目視調査」の費用相場は、約2〜5万円です。調査員が現地に足を運ぶことになるため、別途、交通費や駐車料金などの諸経費が必要になるケースもあります。
分析調査
分析調査には「定性分析」と「定量分析」があり、どちらも費用相場は約3〜6万円です。まず「定性分析」でアスベストの有無を確認し、アスベストの含有が確認されたら「定量分析」で含有量を調べます。「定性分析」と「定量分析」の両方を行った場合は、約4〜15万円の費用がかかることもあります。念のため、両方の分析を行うと想定して費用を用意しておくとよいでしょう。
アスベストのレベルによって調査費用に違いはあるのか?
アスベストは、発じん性が著しく高いレベル1、発じん性が高いレベル2、発じん性が比較的低いレベル3の3段階に分けられています。レベル1とレベル2は分析調査が必要なため、調査費用が高額になりやすいです。レベル3はレベル1、2に比べると危険性が低いため、事前調査を行わずに解体できます。ただし、建物自体の解体費用に加えてアスベストの解体費用が必要で、屋根材で10〜20万円、外壁で20〜30万円の費用が発生する可能性があります。
アスベストの調査費用を抑える3つのポイント
アスベストの調査費用は高額なため、「少しでも調査費用を安くしたい」と考えている人も多いはずです。ポイントを抑えれば、費用相場よりも安くアスベスト調査を行える可能性があります。ここでは、アスベストの調査費用を抑えるポイントを3つご紹介します。
補助金を利用する
自治体によっては、アスベストの調査にかかる費用を補助してくれる制度があります。自治体によって条件は異なりますが、国の補助額は原則25万円/棟となっています。対象建築物は、吹付けアスベスト等が施工されているおそれのある住宅・建築物です。一定の条件を満たす必要があるため、調査を実施する前に各自治体のホームページ等で確認してみましょう。
実績が豊富な業者に依頼する
アスベストの調査費用を抑えるためには、依頼をする業者選びも重要です。業者選びをするときは、ホームーページなどでアスベスト調査の実績があるかどうか確認してみましょう。調査実績数は、適正価格で適切な調査を行っている業者かどうかの判断材料になります。業者によっては、後から高額な追加料金を請求してくるケースもあるため、依頼先は慎重に選びましょう。
複数業者に見積もりを依頼する
依頼先の候補が絞れたら、複数の業者に見積もりを依頼しましょう。1社だけでは、費用の比較ができず不当に高い金額であっても気付くことができません。できれば3〜4社に見積もりを依頼し、費用や対応、信頼性などを確認するのがおすすめです。
信頼できるアスベスト調査業者の選び方
アスベスト調査を請け負っている業者には、不当に高額な調査費用を請求したり、工程を省いて安い値段で調査をしている業者も存在します。以下の3つのポイントを参考に、信頼できる調査業者を見極めましょう。
料金体系が明確になっているか
第一に、料金体系が明確かどうかを確認しましょう。ホームページに料金の目安が書かれていない、見積もり書に具体的な内訳が提示されていないといった場合は、後から高額な追加料金が発生する可能性があります。料金について不明点があるときは、事前にしっかりと確認しておきましょう。
報告書の作成実績は豊富か
アスベスト調査を実施した後は、必ず報告書を作成しなければなりません。報告書の作成実績を見れば、これまで適切なアスベスト調査を行ってきたかどうかを判断できます。アスベスト調査の依頼先を決めるときは、報告書の作成実績も参考にしましょう。
資格を持っている作業員が在籍しているか
2023年10月以降、アスベストの事前調査・分析を行えるのは「アスベスト診断士」や「建築物石綿含有建材調査者」などの資格を保有している人に限ると義務付けられました。そのため、依頼する業者に資格保有者がいるのか、調査経験があるのかも確認する必要があります。
アスベストの調査が必要なケース
アスベストの調査は、建物の解体・改修を行うとき以外にも、使用している建物に対して調査が求められた場合や、建物の売買・貸借を行うときにも必要です。なぜアスベストの調査が必要なのか、それぞれのケースの詳細を見ていきましょう。
建物の解体や改修を行う場合
最もイメージしやすいのが、建物の解体や改修を行うケースです。先述したように、アスベストは健康に被害を及ぼす可能性があり、厳重に飛散を防止しなければなりません。そのため、建物を解体・改修するときは、必ずアスベストの事前調査を行う必要があります。
使用中の建物に対して調査が求められる場合
使用している建物に、アスベストを含む建材が使用されていることが判明している場合、アスベスト調査の実施を求められることがあります。調査の結果によって、アスベストの除去、封じ込め、囲い込みなど適切な措置を取らなければなりません。また、天井裏で空調や電気の工事を行うときも、アスベスト調査が必要なケースもあります。
建物の売買や貸借を行う場合
建物の売買や貸借を行う際は、アスベスト調査の実施は義務ではありません。ただし、過去にアスベスト調査を実施した記録がある場合は、調査結果を書面で知らせる必要があります。もし、調査結果を伝え忘れていた場合は「契約不適合責任」として損害賠償請求や売買契約解除に至る可能性があるので注意しましょう。
アスベストの劣化状態について
劣化したアスベスト含有建材は、状態によっては飛散リスクが高まる可能性があります。最後に、劣化したアスベストがどのような状態になるのか確認しておきましょう。
層表面に毛羽立ちが見られる
層表面の毛羽立ちは、吹付けアスベスト層の結合剤の劣化によって発生します。毛羽立ちが見られたときは比較的初期の劣化段階と言えます。この時点で処置をしておくと更なる劣化を防げるでしょう。
たれ下がってしまっている
表層部の吹付けアスベストが垂れ下がっている状態は、既に劣化が進んでいるサインです。早めに処置を行い、層の欠損や損傷を防ぎましょう。
まとめ
アスベスト調査は、アスベストによる健康被害を防ぐために必要な調査です。調査費用の相場は、図面調査が2〜3万円、目視調査が2〜5万円、分析調査が3〜6万円となっており、建物の所有者が負担するのが一般的です。アスベストは危険度によって1〜3のレベルに分けられており、危険度が高いとその分調査費用も高額になります。少しでも調査費用を抑えるためには、補助金の利用や実績豊富な業者の見極めが重要です。料金体系や資格の有無を確認し、複数業者に見積もりを依頼しましょう。アスベストの調査は、建物の解体・改修のとき以外にも、調査を求められた場合や売買・貸借の際に必要なこともあります。また、アスベストは劣化が進むと飛散リスクが高くなるため、毛羽立ちやたれ下がりには十分に注意し、早めに処置を行いましょう。