アスベストは発じん性の高さによって1〜3のレベルに分けられています。レベルごとに除去費用も上下するため、レベルごとの違いを頭に入れておくとよいでしょう。この記事では、アスベストのレベルごとに使用されている場所や除去費用について解説しています。除去費用を抑えるポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
そもそもアスベストとは?
アスベストとは、自然に作られた繊維状の鉱物で「せきめん」「いしわた」とも呼ばれています。アスベストには6つの種類があり、その中でも「クリソタイル(白石綿)」と呼ばれるアスベストは、ほとんどの石綿製品の原料として使用されてきました。また、「クロシドライト(青石綿)」や「アモサイト(茶石綿)」は耐熱性や耐摩擦性に優れている点が特徴で、様々な建築物に吹付け石綿として使われてきました。
アスベストが危険と言われている理由
「奇跡の鉱物」と呼ばれ重宝されてきたアスベストですが、長期に渡って大量のアスベストを吸い込むと健康に悪影響があることが明らかになりました。アスベストが原因で発症する病気は「肺がん」「悪性中皮腫」「じん肺」など重症化する恐れがある疾患ばかりです。その結果、2006年にアスベストの使用は禁止されました。しかし、2006年以前に建てられた建築物にはアスベストが含まれている可能性があり、解体やリフォームの際に飛散するリスクがあります。そのため、建物を解体するときは必ずアスベスト調査を行わなければなりません。
アスベストのレベルによる違い
アスベストには1〜3のレベルがあり、発じん性の高さによってレベルが分かれています。レベル1は発じん性が著しく高く、最も飛散の危険度が高いです。レベル2は発じん性が高い、レベル3は発じん性が比較的低いとされています。アスベストの飛散は、作業員や近隣住民の健康に影響を及ぼす恐れがあるため、レベル別に飛散対策をし、慎重に除去しなければなりません。
アスベストレベル1の概要(発じん性が著しく高い)
最も飛散のリスクが高く危険なのが、レベル1のアスベストです。レベル1は綿状になっているため、風に乗ると一気に繊維が飛散してしまいます。大量に吸い込んでしまうと人体に影響が出る恐れがあり大変危険です。そのため、レベル1のアスベストを除去するときは、防護服や隔離など厳重な対策をして作業を行います。
代表的な建材の種類
レベル1の建材には、アスベストとセメントを混ぜ合わせた「アスベスト吹き付け材」や、ロックウールの中にアスベストを混ぜ入れた「石綿含有ロックウール吹き付け材」などがあります。吹き付け材はアスベストの濃度が高く、除去の際には粉じんが大量に飛散します。
使用されている場所
レベル1の建材は、エレベーター周りや耐火建築物の梁・柱、立体駐車場の天井、ビルの機械室などに使用されています。耐火用、断熱用として使われていることが多く、一般的な木造住宅にはほとんど使用されていません。
アスベスト除去に必要な対策
レベル1のアスベストを除去する際は、厳重な飛散対策が欠かせません。作業中には、アスベストを除去している旨の看板を掲示し、作業場も徹底的に清掃します。作業員は防じんマスクや防護服を着用し、クリーンルームを設置してアスベストを持ち出さないように対策を行います。
作業工法の種類
建物の解体を行う場合は、事前のアスベスト除去は必須です。ただし、改修のみ行う場合は、薬液でアスベストの飛散を防ぐ「封じ込め工法」や、板材で密閉する「囲い込み工法」を用いることがあります。どの作業工法を行うかは、アスベストの状態や予算などを加味して決定します。
必要な書類や届出
レベル1のアスベストが含まれている建物を解体するときには、労働基準監督署に「事前調査結果の届出」「工事計画届」「建物解体等作業届」を提出します。さらに、都道府県庁に「特定粉じん排出等作業届」と「建設リサイクル法の事前届」の提出も必要です。
アスベストレベル2の概要(発じん性が高い)
レベル2のアスベストは発じん性が高いものの、レベル1よりは飛散しにくいです。しかし、密度が低くて軽いものが多く、一度崩れると大量に飛散する恐れがあります。レベル1と同様に、飛散対策を行って慎重に作業しなければなりません。
代表的な建材の種類
レベル2の建材には、「石綿含有保温材」や「耐火被覆材・断熱材」などがあります。シート状に巻きつけて使われることが多いため、巻きつけられている箇所だけを取り外して除去することも可能です。
使用されている場所
レベル2の建材は、ボイラーの本体部分や配管、柱や壁の耐火被覆材、屋根用折板裏断熱材、煙突用断熱材、空調ダクトの保温材などに使われています。
アスベスト除去に必要な対策
レベル2のアスベストを除去する際も、レベル1と同じように厳重な飛散対策が必要です。看板での注意喚起や作業場の清掃は欠かせません。ただし、作業員が着用する保護服は、レベル1と比べるとやや簡易的なものになります。
作業工法の種類
レベル2のアスベストを除去する際は、配管ごと切断するなどアスベストが飛散しない方法であれば、作業場所の隔離は不要なケースがあります。また、「封じ込め工法」や「囲い込み工法」を用いて作業することもあります。
必要な書類や届出
レベル1と同じく、レベル2のアスベストが含まれた建物を解体するときには、労働基準監督署に「事前調査結果の届出」「工事計画届」「建物解体等作業届」、都道府県庁に「特定粉じん排出等作業届」と「建設リサイクル法の事前届」を提出します。レベル2の「工事計画届」の提出は以前は不要でしたが、令和3年の規則改正によって必要になったため、忘れないように注意しましょう。
アスベストレベル3の概要(発じん性が比較的低い)
レベル3のアスベストは、レベル1とレベル2に比べると発じん性が比較的低いです。板状の物が多く、硬く割れにくいため飛散リスクが低いとされています。それでも、解体時にはしっかりと飛散対策を行い、近隣住民に配慮する必要があります。
代表的な建材の種類
レベル3の建材は、硬い床材や壁材などです。板状でなくても、硬く成形されているものはレベル3に該当します。
使用されている場所
レベル3の建材は、建物の屋根材や外壁材、天井・壁・床の内装材、ビニール床のタイルなどに使われています。また、ダクトを連結するためのパッキンにも含まれていることがあります。レベル3は、レベル1・2よりも一般的な木造住宅で使用されている可能性が高いです。
アスベスト除去に必要な対策
レベル3のアスベストを除去するときは、水や薬液を使って建材を湿らせたり、飛散防止の養生シートを使うなど基本的な対策が必要です。レベル1や2と比べて飛散リスクは低いものの、破砕の危険性があるため、投下や重機作業は禁止されています。
作業工法の種類
レベル3のアスベストは板状になっているものが多いため、防護服を着用して手ばらしで除去を行います。その際、散水や湿潤剤の噴霧を行いながら飛散を防止します。
必要な書類や届出
レベル3のアスベストについては、労働基準監督署に「事前調査結果の届出」、都道府県庁に「建設リサイクル法の事前届」を提出する必要があります。以前は、レベル3の「事前調査結果の届出」の提出は不要でしたが、令和4年からは一定規模の建築物等については提出が義務付けられています。
アスベストのレベルごとの除去費用の違い
ここまで、アスベストのレベルごとの特徴や除去に必要な対策などを解説してきましたが、除去に必要な費用が気になっている方も多いでしょう。アスベストの除去費用は、レベルによって異なります。ここではアスベストのレベルごとの除去費用を解説します。
アスベストレベル1
レベル1の除去費用の目安は1.5〜8万円/㎡です。レベル1のアスベストは天井や柱などの広範囲に吹付けられていることが多く、除去面積が広いため除去費用が高額になりやすいでしょう。また、厳重な飛散対策が求められるため、その分作業費用が高くなります。
アスベストレベル2
レベル2の除去費用の目安は1〜5万円/㎡です。レベル1と同様の作業が必要となるため、作業費用が高額になりやすいでしょう。レベル1よりも防護服などが簡易的になる点や、除去面積によって、やや費用が安くなることもあります。
アスベストレベル3
レべル3の除去費用の目安は3千円/㎡です。レベル3のアスベストは、比較的飛散リスクが低いため、レベル1・2に比べると費用が安くなります。ただし、使用されている建材が多い場合や、途中でアスベストが見つかった場合は費用が高額になることもあるため注意が必要です。
アスベスト除去工事の費用を抑えるポイント
最後に、「アスベスト除去の費用を少しでも安くしたい」と思っている方に向けて、アスベストの除去工事の費用を抑えるポイントを3つご紹介します。
補助金を利用する
自治体によっては、アスベスト除去の際に補助金を利用できる場合があります。対象のアスベストはレベル1に当たる「吹付けアスベスト」「アスベスト含有吹付けロックウール」が大半で、費用の2/3以内かつ100万円以内の補助金が支給されることが多いです。条件や支給額は自治体によって異なるため、ホームページ等で詳細を確認してみましょう。
複数業者に見積もり依頼をする
アスベストの除去を依頼するときは、1社だけではなく複数の業者に見積もりを依頼しましょう。1社だけでは、見積もり金額や工事内容を比較できません。できれば3〜4社に見積もりを依頼し、信頼できる業者に除去工事をお願いしましょう。複数の業者に見積もりを依頼するのが面倒なときは、一括見積もりサイトを利用するのもおすすめです。
アスベスト除去の実績が豊富な業者に依頼する
先述してきたように、アスベストの除去は慎重な作業が求められます。不慣れな解体業者に依頼してしまうと、飛散防止策が不十分であったり、作業が乱雑な可能性もあります。アスベスト除去を行うときは、アスベスト除去の実績が豊富な業者に依頼しましょう。ただし、補助金を利用する場合は、依頼する業者が限定されているケースもあるため、よく条件を確認してから契約するようにしましょう。
まとめ
アスベストは、耐熱性や防音性、耐摩擦性に優れた繊維状の鉱物です。これまで様々な建築物に使用されてきましたが、長期に渡って大量のアスベストを吸い込むと健康に悪影響があることが明らかになりました。2006年からは使用が禁止されましたが、それ以前に建てられた建物はアスベストを含んでいる可能性があり、解体をするときは事前調査が必要です。アスベストには、発じん性が著しく高い「レベル1」、発じん性が高い「レベル2」、発じん性が比較的低い「レベル3」の3つの種類があります。危険度が高いレベル1は除去費用が高くなりやすいため、補助金制度の対象となっています。アスベストの除去工事を行う際は、複数業者に見積もりを依頼し、実績豊富な業者と契約を結びましょう。