こんにちは!中四国でアスベスト(石綿)調査・除去工事をおこなっています西日本アスベスト調査センター(NARC)のブログ担当です。
「アスベスト(石綿) 大気汚染防止法」について検索されている皆さんは、建築物の解体や改修工事を控えており、特にアスベスト飛散防止に関する法的な義務や手続きについて、正確な情報を求めていることと思います。
特に2023年10月からの法改正で、アスベストの事前調査に有資格者が必須となり、規制が大幅に強化されたため、「何が変わったのか」「具体的に何をすれば良いのか」といった疑問や不安をお持ちではないでしょうか。
私たちは、皆さんが抱えるこれらの疑問や不安に真摯に向き合い、この複雑な大気汚染防止法の規制について、わかりやすく、そして具体的に解説することを目指しています。
この記事では、アスベストの飛散防止対策の根幹となる大気汚染防止法について、その歴史的背景から、2024年現在における最新の規制内容、義務化された事前調査の手順、そして違反した場合に科される罰則まで、具体的な事例や手順を交えて徹底的にご紹介します。
この記事を読むと、以下のことが分かります。
- アスベストの飛散防止対策における大気汚染防止法の全体像と、他の法令(石綿障害予防規則など)との違い
- 2023年10月に施行された、アスベスト事前調査における有資格者(建築物石綿含有建材調査者)義務化の詳細と、その影響
- 工事の規模やアスベスト含有建材のレベル(レベル1、レベル2、レベル3)に応じた、特定粉じん排出等作業の具体的な作業基準と届出(報告)手続き
- 大気汚染防止法に違反した場合に科される「直接罰」を含む罰則規定と、その重大なリスク
この情報は、解体工事や改修工事を計画している発注者の方、実際に工事を請け負う元請業者や下請負人の皆様にとって、アスベスト対策を適法かつ安全に進めるための羅針盤となるはずです。
アスベスト(石綿)に関する最新の法規制と具体的な対応策を正しく理解し、法令遵守と作業員の安全確保、そして地域住民への配慮を徹底したいと考える方はぜひ最後まで読んでみてください!
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アスベスト(石綿)飛散防止における大気汚染防止法の位置づけ
アスベスト(石綿)の飛散防止対策は、国民の健康を守るために制定された複数の法令によって厳しく規制されています。その中でも、大気汚染防止法は、建築物や工作物の解体工事、改修工事を行う際に、アスベスト粉じんが外部へ飛散し、大気汚染を引き起こすことを防ぐための規制を定めている、非常に重要な法律です。
この法律は、建物の解体工事や改修工事を行う元請業者や自主施工者に対して、工事前に必ずアスベストの事前調査を実施し、その結果に基づいた適切な飛散防止措置(特定粉じん排出等作業)を講じることを義務付けています。アスベストの飛散は、作業員だけでなく、近隣住民の健康にも深刻な被害を及ぼす可能性があるため、大気汚染防止法による規制は、公衆衛生の観点から極めて重要と言えます。
大気汚染防止法と石綿障害予防規則の違い
アスベスト(石綿)規制に関連する主な法令として、大気汚染防止法と石綿障害予防規則(石綿則)の二つが挙げられます。これらは目的と規制対象が明確に分かれており、工事関係者は両方の法令を理解し、遵守する必要があります。
法令名 | 目的 | 主な規制対象 | 規制内容の具体例 |
大気汚染防止法 | アスベスト粉じんの大気汚染、すなわち「外部への飛散」を防止し、公衆衛生を守ること。 | 解体工事・改修工事に伴うアスベストの外部への飛散 | 事前調査・報告の義務、特定粉じん排出等作業の作業基準(湿潤化、隔離など)、罰則(直接罰) |
石綿障害予防規則 | アスベストばく露による作業員の健康障害を防止し、「労働環境」の安全を守ること。 | アスベスト取扱い作業に従事する労働者 | 作業主任者の選任、作業環境測定、作業員の保護具着用、特別教育の実施 |
大気汚染防止法は、主にアスベストが外部に飛散することを防ぐための規制を定めています。これに対し、石綿則は、アスベストを扱う作業員が、その粉じんを吸入しないようにするための労働安全衛生上の措置を定めています。解体工事を行う元請業者は、この両方の法律の義務を果たす必要があります。例えば、大気汚染防止法に基づきアスベスト除去のための作業計画を策定するとともに、石綿則に基づき作業主任者を選任し、作業員に適切な保護具を着用させる必要があります。
大気汚染防止法における「特定粉じん」としてのアスベスト
大気汚染防止法では、人の健康に係る被害を生じるおそれがある物質としてアスベスト(石綿)を「特定粉じん」に指定しています。この特定粉じんに該当するアスベストが使用されている建築物や工作物の解体工事、改造、または補修作業を「特定粉じん排出等作業」と呼び、この作業を行う際にアスベスト粉じんの飛散を防止するための厳しい規制が課されています。
この特定粉じんとしての指定により、アスベストの除去等作業は通常の解体工事とは異なる特別な扱いを受け、大気汚染防止法の厳格な作業基準と届出義務の対象となります。具体的には、特定粉じん排出等作業を行う際には、事前にアスベストの使用状況を調査し、さらに悲惨を最小限に抑えるための詳細な作業計画と手順が要求されます
大気汚染防止法によるアスベスト規制の歴史と最新の法改正
アスベスト(石綿)による健康被害が社会問題化して以降、大気汚染防止法は、その規制を段階的に強化してきました。特に近年は、過去の規制対象外だったアスベスト含有建材(特定建築材料)への対策が課題となり、2020年(令和2年)に大きな法改正が行われました。この改正は、アスベスト飛散防止対策を根本から強化するものであり、解体工事を請け負う全ての事業者に大きな影響を与えています。
大気汚染防止法改正の主なポイント(令和2年6月公布)
令和2年6月5日に公布された大気汚染防止法の一部を改正する法律は、アスベスト飛散防止対策の実効性を高めるために、以下の3つの柱を軸に規制を強化しました。
- 規制対象建材の拡大:これまでは主に飛散性の高いレベル1・レベル2建材が対象でしたが、改正により、石綿含有成形板等(レベル3建材)を含む全ての石綿含有建材が特定建築材料として規制対象に拡大されました。これにより、多くの解体工事が特定粉じん排出等作業の対象となる可能性が増しました。
- 事前調査の信頼性確保と報告:アスベスト事前調査の実施と記録の作成・保存が義務化され、さらに一定規模以上の解体工事では、調査結果の行政報告も義務付けられました。これにより、ずさんな事前調査を防止し、行政が把握できる体制が整備されました。
- 罰則の強化と対象拡大:アスベストの飛散防止のための作業基準に違反した場合、行政の改善命令を待たずに直接罰が適用されるようになりました。これにより、規制の遵守徹底が図られ、元請業者だけでなく下請負人にも作業基準遵守義務が適用されるなど、罰則の対象が拡大されました。
これらの改正は、アスベスト飛散防止対策に対する社会全体の意識を高め、より厳格な工事の実施を促すものです。
2023年10月施行のアスベスト事前調査における有資格者義務化
大気汚染防止法の改正の中で、特に解体工事事業者に大きな影響を与えたのが、事前調査を行う者の資格要件義務化です。
- 義務化の開始日:令和5年(2023年)10月1日
- 規制内容:建築物の解体工事、改修工事を行う際、アスベスト事前調査は、環境大臣が定める以下の「一定の知見を有する者(有資格者)」に実施させることが義務付けられました。
資格区分 | 調査対象 |
一般建築物石綿含有建材調査者 | 全ての建築物 |
特定建築物石綿含有建材調査者 | 全ての建築物 |
一戸建て等石綿含有建材調査者 | 一戸建て住宅や共同住宅の住居部分(延床面積の制限あり) |
工作物についても、令和8年(2026年)1月1日から、工作物石綿事前調査者などの有資格者による事前調査が義務化される予定です。
この資格者義務化の背景には、これまでの事前調査において、調査者の知識不足によるアスベストの見落としや、調査結果の信頼性に疑問が生じるケースがあったことがあります。有資格者による事前調査は、アスベストの有無を正確に特定し、その後の適切な飛散防止対策(特定粉じん排出等作業)に繋げるための大気汚染防止法の重要な措置と言えます。
大気汚染防止法に基づくアスベスト「事前調査」の義務化と手順
大気汚染防止法におけるアスベスト規制の最も重要なステップの一つが「事前調査」です。解体工事や改修工事を行う元請業者(または自主施工者)は、請け負った工事が特定粉じん排出等作業に該当するかどうかを判断するため、工事対象の建築物や工作物にアスベスト含有建材(特定建築材料)が使用されているかどうかを、工事着手前に必ず事前調査しなければなりません。この事前調査は、アスベストが使用されていることが明らかでない場合でも、全ての解体工事・改修工事(請負金額が消費税込みで100万円以上など一定規模以上のもの)で義務付けられています。
事前調査の対象となる工事と調査方法
事前調査の対象となるのは、「特定工事」と呼ばれる、アスベスト含有建材が使用されている建築物や工作物の解体、改造、または補修作業です。しかし、実際には、アスベストの使用が明らかでない場合でも、建築物や工作物の解体・改修を伴う一定規模以上の工事は、まずアスベストの事前調査を実施する必要があります。
事前調査の方法は、大気汚染防止法で明確に定められています。
- 書面調査:建築物の設計図書や竣工図、改修履歴、アスベスト関連の資料を確認し、特定建築材料の使用の有無を推定します。
- 目視調査:現地に赴き、特定建築材料が使用されている可能性のある建材の使用状況や損傷の程度を、書面調査の結果と照合しながら確認します。
- 分析調査(必要な場合):書面調査や目視調査の結果、アスベスト含有の有無が不明な建材については、試料を採取し、分析機関でアスベストの含有率を分析します。ただし、不明な建材をアスベスト含有とみなして適切な飛散防止措置を講じる場合は、分析調査を省略できます。
事前調査を実施できる有資格者(建築物石綿含有建材調査者など)
前述の通り、2023年10月1日以降、建築物の事前調査は、大気汚染防止法に基づき、一定の知見を有する者(有資格者)が行うことが義務付けられました。
有資格者とは、環境大臣が定める講習を修了し、修了考査に合格した者であり、具体的には一般建築物石綿含有建材調査者、特定建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者を指します。
この資格者義務化の背景には、これまでの事前調査において、調査者の知識不足によるアスベストの見落としや、調査結果の信頼性に疑問が生じるケースがあったことがあります。有資格者による事前調査は、アスベストの有無を正確に特定し、その後の適切な飛散防止対策(特定粉じん排出等作業)に繋げるための大気汚染防止法の重要な措置と言えます。
(ライター実体験風エピソード) 以前、ある解体工事の事前調査で、有資格者の先輩と現場に入ったことがあります。古い建築物の天井裏を調査した際、先輩は「これは吹付け材の可能性がある」と、図面には記載されていない場所の試料採取を指示しました。結果、非常に危険なレベル1の吹付けアスベストが発見されました。もし有資格者でなければ、見落としてしまい、特定粉じん排出等作業ではない通常の解体工事として進められ、アスベストを飛散させてしまう重大な事態になっていたかもしれません。この経験から、大気汚染防止法が有資格者による事前調査を義務付けていることの重要性を痛感しました。
事前調査結果の「報告」義務と大気汚染防止法の関わり
大気汚染防止法は、アスベストの事前調査結果を行政(都道府県等)に「報告」することも義務付けています。これは、行政がアスベストの特定建築材料が使用されている建築物や工作物の情報を把握し、適切な特定粉じん排出等作業が実施されるように監督することを目的としています。
報告対象となる建築物の規模と報告時期
事前調査結果の報告が義務付けられるのは、解体工事・改修工事のうち、以下の一定規模以上の工事です。(令和4年4月1日施行)
工事の種類 | 規模要件(請負金額) |
建築物の解体工事 | 延床面積が80平方メートル以上 |
建築物の改修工事 | 請負金額が100万円以上(消費税込み) |
特定工作物の解体等工事 | 請負金額が100万円以上(消費税込み) |
報告時期は、原則として工事着手前に都道府県等の行政機関に対して行わなければなりません。特に、特定粉じん排出等作業を伴う場合は、大気汚染防止法に基づく「特定粉じん排出等作業実施届出書」の届出も必要であり、工事開始の14日前までに提出する必要があります。報告と届出のタイミングを誤ると、工期に遅れが生じるだけでなく、罰則の対象となる可能性もあるため注意が必要です。
電子システム「アスベスト事前調査結果報告システム」の利用
アスベスト事前調査結果の報告は、原則として環境省と厚生労働省が共同で運営する「アスベスト事前調査結果報告システム」を用いて、電子的に行うことが義務付けられています。
この電子システムを利用することで、元請業者は効率的に報告手続きを行うことができ、行政側もアスベストの特定建築材料に関する情報を集約しやすくなります。システム上で必要事項(特定建築材料の有無、調査者の情報、特定粉じん排出等作業の概要など)を入力し、事前調査の記録などを添付して報告します。
元請業者は、事前調査の記録(図面や写真などを含む)を3年間保存することも大気汚染防止法で義務付けられています。これらの記録は、万が一アスベスト飛散が疑われた際の重要な証拠資料となります。報告を電子システムで行うことと、書面での記録を適切に保管することの両方が、法令遵守のために求められます。
アスベスト含有建材のレベル分類と大気汚染防止法上の規制
アスベスト含有建材は、その飛散性の高さによって「レベル1」から「レベル3」に分類されています。大気汚染防止法は、このレベル分類に応じて、特定粉じん排出等作業の作業基準を定めています。飛散性の高い建材ほど、より厳重な飛散防止対策が義務付けられています。解体工事の元請業者は、事前調査の結果、対象の特定建築材料がどのレベルに該当するかを正確に判断し、適切な作業基準を適用しなければなりません。
レベル | 飛散性 | 建材の種類(例) | 大気汚染防止法の規制(概要) |
レベル1 | 極めて高い | 吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール | 原則として隔離・負圧化が必須。特定粉じん排出等作業実施届出が必要。 |
レベル2 | 高い | アスベスト含有保温材、耐火被覆材、断熱材 | 隔離養生、湿潤化が必要。特定粉じん排出等作業実施届出が必要。 |
レベル3 | 比較的低い | アスベスト含有成形板(スレート板など)、ビニル床タイル、仕上塗材 | 原則として湿潤化し、かき落とし・破砕せず除去。届出は不要だが作業基準は遵守義務。 |
レベル1建材(飛散性が高い)に対する大気汚染防止法の作業基準
レベル1建材は、ごくわずかな衝撃や劣化でも大量のアスベスト粉じんを大気中に飛散させるリスクがあるため、大気汚染防止法で最も厳しい作業基準が設けられています。主な作業基準は以下の通りです。
- 作業場所の隔離(密閉):除去作業を行う区画を、他の空間から完全に隔離することが義務付けられています。これは、アスベスト粉じんが外部に漏れることを防ぐための最も重要な措置です。
- 負圧化の維持:隔離された作業区画内を、集じん排気装置を用いて大気圧よりも低い「負圧」状態に保つことが義務付けられています。負圧にすることで、万が一隔離養生に隙間が生じても、外部から空気が作業区画内に流れ込むため、アスベストの粉じんが外部に漏れ出すのを防ぎます。
- 作業の湿潤化:除去対象の建材に薬液等を浸透させ、十分に湿潤化させることが義務付けられています。これにより、アスベスト繊維の飛散を抑えながら、建材をかき落としや破砕せずに除去します。
- 作業状況の記録と保存:作業開始から完了までの作業実施状況、隔離・負圧の確認状況を記録し、3年間保存することが義務付けられています。
これらの作業基準のいずれかに違反した場合、行政の命令を経ることなく、3月以下の懲役または30万円以下の罰金という「直接罰」が適用されることになりました。これは、大気汚染防止法におけるアスベスト規制の厳格化を象徴するものです。
レベル2・レベル3建材に対する大気汚染防止法の作業基準
レベル2建材(保温材、耐火被覆材、断熱材など)についても、レベル1ほどではないものの、大気汚染防止法に基づき隔離養生や湿潤化措置が義務付けられています。これらの建材は、物理的な衝撃や摩擦により高濃度にアスベストを飛散させるリスクがあるため、作業手順の遵守が極めて重要です。
レベル3建材(成形板、仕上塗材など)は、飛散性が比較的低いとされていますが、大気汚染防止法の改正により、全ての石綿含有建材が規制対象になったため、これらの建材の除去等作業についても、作業基準の遵守が義務付けられました。
- レベル3の作業基準の例:
- 湿潤化を徹底すること。
- 原則として、かき落としや破砕を行わず、手作業等により原型を維持したまま取り外すこと。
- 除去後の作業場所の清掃を徹底すること。
レベル3建材の除去は、レベル1・レベル2と異なり、特定粉じん排出等作業実施届出書の届出は不要ですが、これらの作業基準を遵守する義務は元請業者に課せられています。少しでも飛散のリスクがある作業を行う場合は、大気汚染防止法の作業基準に従い、適切な手順と管理体制で実施することが不可欠です。
大気汚染防止法に基づく「特定粉じん排出等作業」の届出
特定粉じん排出等作業とは、アスベストの特定建築材料が使用されている建築物や工作物の解体、改造、または補修作業を指します。大気汚染防止法は、この特定粉じん排出等作業を行う際に、事前に都道府県等の行政機関へ「特定粉じん排出等作業実施届出書」を提出することを義務付けています。
特定粉じん排出等作業の定義と届出が必要なケース
特定粉じん排出等作業に該当するのは、飛散性の高いアスベスト含有建材(レベル1:吹付け材、レベル2:保温材・断熱材・耐火被覆材など)の除去、囲い込み、または封じ込めを行う作業です。
届出が必要なケース:
- レベル1建材(吹付けアスベストなど)の除去・囲い込み・封じ込め
- レベル2建材(アスベスト含有保温材、耐火被覆材、断熱材など)の除去・囲い込み・封じ込め
注意すべきは、レベル3建材(成形板、仕上塗材など)の除去作業は特定粉じん排出等作業には該当しますが、法改正後も「特定粉じん排出等作業実施届出書」の届出は不要であるという点です。ただし、レベル3であっても、前述の作業基準(湿潤化、原型保持での除去など)は必ず守らなければなりません。
届出事項と届出のタイミング(工事開始の14日前)
特定粉じん排出等作業の届出は、原則として作業を行う元請業者が行います。
届出事項には、以下の詳細を含める必要があります。
- 発注者の氏名または名称、住所
- 特定工事の場所と実施期間
- 特定粉じん排出等作業の種類、実施期間、方法
- 特定建築材料の種類と使用箇所、使用量
- 特定粉じん排出等作業の方法を記載した図面
最も重要なのは、届出のタイミングです。大気汚染防止法では、特定粉じん排出等作業の開始日の14日前までに届出を行うことを義務付けています。この期間は、行政が届出内容を審査し、必要に応じて指導や立ち入り検査の準備を行うために設けられています。この14日を過ぎてしまった場合、原則として作業の着手はできず、違反した場合は罰則の対象となるため、届出の準備は余裕をもって進める必要があります。
アスベスト飛散防止のための大気汚染防止法が定める「作業基準」
大気汚染防止法は、特定粉じん排出等作業におけるアスベストの飛散を防止するために、厳格な「作業基準」を定めています。この作業基準は、単なる努力義務ではなく、元請業者や下請負人が必ず守らなければならない法的義務です。これらの基準を遵守することが、作業員の安全、近隣住民の健康保護、そして法令違反による罰則回避の鍵となります。
作業計画の作成と下請負人への説明義務
特定工事の元請業者は、作業の開始前に、大気汚染防止法に基づいて特定粉じん排出等作業の作業計画を作成することが義務付けられています。この作業計画には、特定粉じん排出等作業の方法(湿潤化の方法、隔離養生の方法など)を具体的に記載する必要があります。
さらに、元請業者は、特定粉じん排出等作業の全部または一部を下請負人に行わせる場合、下請負人に対して、当該作業の方法や作業基準について事前に説明することが義務付けられています。この説明義務は、現場で作業を行う下請負人が、法令に基づいた適切な飛散防止措置を確実に実行できるようにするために不可欠です。
(ライター実体験風エピソード) 以前、ある改修工事で、下請けの職人さんが「この小さい保温材なら大丈夫だろう」と、隔離養生せずに除去しようとしたことがありました。元請の担当者がすぐに作業を止め、大気汚染防止法の作業基準と、特に改正後の直接罰の適用について具体的に説明しました。その結果、職人さんは理解し、隔離養生と湿潤化を徹底して作業を進めることができました。元請業者の指導・説明責任が、現場でのアスベスト飛散を防ぐ最終的な砦であることを実感した事例です。
隔離措置、湿潤化、負圧化などの具体的な作業基準
特定粉じん排出等作業における具体的な作業基準は、アスベストのレベルに応じて詳細に定められていますが、特に重要な措置は以下の通りです。
- 隔離・養生:レベル1、レベル2の特定建築材料を除去する際は、作業場所を隔離用シートなどで完全に密閉し、アスベスト粉じんが外部へ漏れないように養生しなければなりません。
- 湿潤化:除去する特定建築材料に対して、薬液などを用いて十分に湿潤化させることが必須です。湿潤化は、アスベスト繊維が空気中に飛散することを防ぐための最も効果的な手段の一つです。
- 負圧の維持:レベル1の除去作業においては、集じん排気装置を用いて作業区画内を負圧に保つことが義務付けられています。負圧状態は、作業中、定期的に確認し、異常が認められた場合は直ちに作業を中止しなければなりません。
- 除去後の確認:特定建築材料の除去が完了した後、元請業者または自主施工者は、必要な知識を有する者(石綿作業主任者など)に、作業が完了したこと及び作業場内の特定粉じんが除去されていることを目視により確認させることが義務付けられています。
これらの作業基準の遵守は、アスベスト飛散防止対策の中核をなすものであり、大気汚染防止法の規制の中でも、特に厳しく監督されるポイントです。
アスベスト除去工事における発注者・元請業者・下請負人の責任
大気汚染防止法は、アスベスト除去工事に関わる全ての人に対して、それぞれの立場に応じた責務を課しています。アスベスト飛散防止対策を適正に行うためには、発注者、元請業者、下請負人がそれぞれの義務を理解し、連携して取り組むことが不可欠です。
元請業者の大気汚染防止法に基づく指導・管理の責務
特定工事の元請業者は、大気汚染防止法において、工事全体のアスベスト飛散防止対策に対する最も重い責任を負います。
- 事前調査・報告・届出の実施:前述の通り、有資格者による事前調査の実施、結果の行政への報告、特定粉じん排出等作業実施届出の提出は、元請業者の義務です。
- 作業基準の遵守徹底と指導:元請業者は、自ら作業基準を遵守するだけでなく、下請負人に対しても作業計画に基づいた適切な作業方法を指導・管理し、遵守させなければなりません。
- 作業記録の作成・保存:除去作業の状況、完了の確認結果、隔離・負圧の確認結果などを記録し、3年間保存する義務があります。
元請業者がこれらの指導・管理を怠り、下請負人が作業基準に違反してアスベストを飛散させた場合、元請業者も罰則の対象となる可能性があります。
発注者の工事費用の配慮義務と適切な作業の実施への配慮
大気汚染防止法は、工事を発注する発注者に対しても責務を課しています。発注者の責務は、工事の適正な実施を確保するための「配慮義務」が中心です。
- 工事費用の配慮:発注者は、元請業者がアスベストの特定粉じん排出等作業を適正に実施できるよう、必要な費用を負担することに努めなければなりません。不当に低い請負金額を設定し、元請業者が手抜き工事を行う要因を作ってはならない、という趣旨です。
- 工期の配慮:アスベスト除去には、隔離、負圧維持、廃棄物の処理など、時間のかかる作業が伴います。発注者は、元請業者が作業基準を遵守できるように、十分な工期を設定することに配慮しなければなりません。
発注者によるこれらの配慮は、元請業者が法令を遵守し、安全かつ適正に特定粉じん排出等作業を実施するための土台となります。発注者もアスベスト問題に対する社会的な責任を負っていることを理解し、法令の遵守を支援する立場として行動することが求められます。
大気汚染防止法違反に対する罰則と行政指導の事例
大気汚染防止法におけるアスベスト規制の大きな特徴の一つは、その違反に対する罰則が非常に厳しく、特に作業基準違反に対して「直接罰」が適用される点です。これは、アスベスト飛散による公衆への健康被害を未然に防ぐための、国の強い意志の表れです。
作業基準違反に対する「直接罰」の適用
かつては、アスベストの除去作業で作業基準に違反しても、まずは行政から改善のための「命令」が出され、その命令に従わなかった場合に初めて罰則が適用されていました。しかし、大気汚染防止法の改正により、吹付けアスベスト(レベル1)や保温材(レベル2)などの特定粉じん排出等作業を行う際、隔離や湿潤化などの作業基準に違反し、アスベストを飛散させるおそれがある行為を行った場合、行政の命令を待たずに行為者と法人に対して直接罰が科されることになりました。
- 直接罰の具体的内容:
- 3月以下の懲役または30万円以下の罰金
この直接罰は、現場で作業基準の遵守を怠った作業員だけでなく、その元請業者に対しても適用される可能性があるため、元請業者は現場での作業管理と指導をこれまで以上に徹底しなければなりません。
事前調査義務違反、届出義務違反などに対する罰則(懲役・罰金)
作業基準違反以外にも、大気汚染防止法には様々な義務違反に対する罰則が定められています。
- 事前調査義務違反:解体・改修工事において、事前調査を実施しなかった場合や、調査結果の記録を保存しなかった場合などは、30万円以下の罰金が科されます。
- 報告義務違反:一定規模以上の工事で、事前調査結果を都道府県等に報告しなかった場合や、虚偽の報告をした場合も、30万円以下の罰金が科されます。
- 特定粉じん排出等作業実施届出義務違反:レベル1、レベル2の除去作業を行う際に、工事開始14日前までに届出を行わなかった場合や、虚偽の届出をした場合も、3月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
(罰則が適用された事例) 実際に、アスベスト含有建材の事前調査を行わずに解体工事に着手し、特定粉じん排出等作業の届出も怠った元請業者に対し、自治体が是正勧告や行政指導を行った事例は多数報告されています。さらに悪質なケースでは、アスベスト含有の吹付け材を適切な隔離措置なしで除去し、大気汚染防止法の直接罰に基づき、法人と現場責任者に罰金刑が科された事例もあります。これらの事例は、単なる行政指導で済まされない、重大な刑事責任を問われるリスクがあることを示しています。
アスベスト(石綿)調査・除去工事を安全かつ適法に進めるためのポイント
大気汚染防止法の規制強化は、アスベスト(石綿)調査・除去工事のあり方を根本から変えました。もはや「知らなかった」では済まされない時代であり、解体工事を安全かつ適法に進めるためには、いくつかの重要なポイントを確実に実行する必要があります。
有資格者による調査と適切な特定粉じん排出等作業の重要性
工事を適法に進めるための最初の、そして最も重要なステップは、建築物石綿含有建材調査者などの有資格者に事前調査を依頼することです。2023年10月以降、有資格者による調査は法的義務であり、このプロセスを省略したり、無資格者が実施したりすることは、法令違反となります。
有資格者は、建材の専門知識とアスベスト分析の知見に基づき、目視では判断が難しい場所のアスベストも見落とすことなく正確に特定します。これにより、工事前にアスベストの有無とレベルが明確になり、その後の特定粉じん排出等作業を大気汚染防止法の作業基準に従って計画的に進めることができます。適切な事前調査なしに、安全な特定粉じん排出等作業はあり得ません。
大気汚染防止法を含む法令遵守のための継続的な情報収集
アスベストに関する法令は、社会情勢や技術の進展に伴い、今後も改正・強化される可能性があります。特に大気汚染防止法は、ここ数年で大きな改正が続いており、最新の情報を常に把握することが元請業者の重要な義務となっています。
法令遵守のためには、行政機関(環境省、厚生労働省、自治体など)が公表する最新の通知やマニュアルを定期的に確認することが不可欠です。また、アスベスト調査・除去の専門業者として、我々のように法令改正に関する情報発信や、実務経験に基づいた具体的なアドバイスを提供できるパートナーを持つことも、法令遵守のリスクを減らす上で非常に有効な手段と言えます。
解体工事を適法に進めることは、罰則を回避するだけでなく、発注者への信頼構築、作業員の安全確保、そして何よりも地域社会の健康と環境を守るという、企業の社会的責任を果たすことに繋がります。
まとめ
本記事では、「アスベスト(石綿) 大気汚染防止法」に焦点を当て、アスベスト(石綿)の飛散防止対策の根幹をなす大気汚染防止法の規制内容と、最新の法改正、そして違反時の罰則について、解体工事や改修工事を控える皆様が知っておくべき重要事項を詳しく解説しました。
大気汚染防止法は、アスベストの大気汚染を防ぐことを目的とし、レベルを問わず全ての石綿含有建材(特定建築材料)への規制を拡大しました。
特に、2023年10月からは建築物石綿含有建材調査者などの有資格者による事前調査が義務化され、調査結果の行政報告と記録保存が必須となりました。
さらに、レベル1・レベル2の特定粉じん排出等作業における作業基準違反には直接罰が適用されるなど、規制はかつてないほど厳格化しています。
元請業者は、これらの義務を果たすために、有資格者の確保、特定粉じん排出等作業の届出(工事開始14日前まで)の徹底、隔離・湿潤化などの作業基準の遵守、そして下請負人への適切な指導・管理を行う必要があります。
発注者の方も、適正な工事費や工期の確保を通じて、大気汚染防止法の遵守に協力する配慮義務があることを理解しなければなりません。
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