「木造一戸建てにアスベストは使用されている?」「アスベストが使われている木造一戸建て住んでいたら、身体に影響がある?」など、アスベストに対して不安を感じている人も多いでしょう。実際、アスベストは様々な建築物に使用されており、木造一戸建ても例外ではありません。本記事では、木造一戸建てのどこにアスベストが使用されているのか、使用されていたらどうなるのかなど、不安点を一つ一つ解説しています。ぜひ、今後の参考にしてみてください。
アスベストに関する基礎知識
そもそも、アスベストとはどのようなものなのでしょうか。アスベストが危険と言われるようになった理由やアスベストに関する規制など、アスベストの基礎知識を頭に入れておきましょう。
そもそもアスベストとは?
アスベストは別名「石綿」とも呼ばれる、繊維状の鉱物です。特徴として、耐熱性や遮音性、耐摩擦性などに優れていることが挙げられます。さらに世界各地で豊富に採取することができたため価格が安く「奇跡の鉱物」として重宝されていました。
アスベストが危険視され始めた理由
2005年(平成17年)、アスベストを製造するメーカーの従業員が肺がんや中皮腫で死亡していたことが明らかになりました。この件がきっかけで、アスベストが人体に悪影響を及ぼす可能性があると認識されるようになりました。
アスベストが原因で引き起こされる病気はどれも潜伏期間が長く、早期発見が難しいと言われています。アスベストによって発症する恐れがある病気は、以下の通りです。
- 肺がん:石綿繊維の刺激が肺がんの原因になるとされ、15〜40年の潜伏期間がある。
- 石綿肺:肺が線維化してしまう疾患で、15〜20年の潜伏期間がある。
- 悪性中皮腫:胸膜や腹膜に悪性の腫瘍ができる疾患で、20〜50年の潜伏期間がある。
アスベストに関する規制
アスベストに関する規制は段階的に厳しくなり、2006年9月1日より全面的にアスベストの製造・輸入・使用が禁止されました。以降も何度も法改正が繰り返され、2023年10月1日からは「有資格者によるアスベスト事前調査・分析」が義務付けられました。
また、アスベストには1~3のレベルがあり、レベル1が最も危険とされています。レベル1のアスベストを除去するときは、防護服や防塵マスクなど厳重な対策をするよう定められています。このように、今後もアスベストの取り扱いに関する規制はどんどん厳しくなっていくと言えるでしょう。
木造一戸建てでもアスベストが使用されている可能性はある
先述した通り、現在はアスベストの使用は禁止されています。しかし規制が強化される前に建てられた木造一戸建てには、アスベストが使用されている可能性があります。アスベストが使用されているかどうか知りたいときは、まずいつ建てられたのか建築年を確認してみましょう。2006年以前に建築されている場合は、アスベストが使用されている可能性が高いです。
木造一戸建てでアスベストが使用されている可能性のある場所
木造一戸建てには、屋根・内装・外壁・床など様々な場所にアスベストが使用されている可能性があります。どこにどのようなアスベストが使用されている恐れがあるのか、詳しく見ていきましょう。
屋根
- 化粧スレート:セメントと石綿を混ぜた屋根材で、5ミリ前後の薄さが特徴的。
- セメント瓦:セメントと川砂を混ぜた屋根瓦で、2〜3センチの厚みがある。
内装
- バーミキュライト吹付け材:主に天井に使用する吹付け材。ザラザラした手触りが特徴。
- ケイ酸カルシウム板:水酸化カルシウムと砂を使った板材。天井や裏側の壁に使われていることが多い。
外壁
- 窯業系サイディング:セメントと繊維質を混ぜた板状の外壁材。繊維質にアスベストが含まれている可能性がある。
- 仕上げ塗材:塗装のひび割れを防止するために塗られる。白石綿(クリソタイル)、茶石綿(アモサイト)が使用されている可能性がある。
床
- ビニル床タイル:塩化ビニル樹脂を主原料にしたタイル。1986年頃のタイルには、アスベストが含まれている可能性が高い。
- 煙突材:煙突に使われた断熱材にアスベストが含有している可能性がある。
木造一戸建てでアスベストが使用されているとどうなる?
もし、木造一戸建てにアスベストが使用されていたらどうなるのでしょうか。身体への影響や解体工事の際の費用など、気になるポイントを解説します。
すぐに健康被害があるわけではない
木造一戸建てにアスベストが使用されていたとしても、すぐに身体に影響があるわけではありません。ただし、アスベスト含有建材が破損していたり、吹付けアスベストが露出したりしている場合は、アスベストが空気中に飛散している可能性があります。長期的に吸い込むと健康被害の恐れがあるため、すみやかに解体や修繕を検討しましょう。
リフォームの際に対策が必要になる
木造一戸建てを100万円以上の費用をかけてリフォームするときは、アスベスト事前調査と調査結果の報告が必須です。事前調査でアスベストの含有が確認された場合は、除去工事を行ってからリフォーム作業を行うことになるでしょう。
100万円以下の場合でも、事前調査をしてからリフォームに取り掛かった方が安心です。万が一のことを考えてしっかりとアスベスト対策をしておきましょう。
解体工事の際に費用が高くなる
アスベストを含む木造一戸建てを解体するときは、解体費用とは別にアスベストの処理・処分に費用がかかります。2008年に国土交通省より発表された、アスベスト除去工事の費用目安は以下の通りとなっています。
アスベスト処理面積 | 費用目安 |
300㎡以下 | 2~8.5万円 |
300~1,000㎡ | 1.5~4.5万円 |
1,000㎡以上 | 1~3万円 |
上記の金額に作業員の装備・アスベスト対策にかかる費用が追加されたり、部屋の形状や天井の高さによって費用が増額することもあります。
売却の際にトラブルに発展する可能性がある
木造一戸建てを売却するときは、アスベスト調査を行ったかどうかを開示する必要があります。もしアスベスト調査を行わなかったり、結果報告を怠ったりした場合は、売却後に「契約不適合責任」を問われる可能性があるので注意しましょう。
また、アスベストが使用されている木造一戸建ては、そもそもの売却価格が低い傾向があります。とは言え、少しでも高く売却したいからと虚偽の申告をすると、後々トラブルに発展する恐れがあります。きちんと調査を行い、結果を開示することが大切です。
アスベストの調査義務は誰にある?
アスベストの事前調査、及び報告の義務は「元請業者」にあります。そのため、施主側は元請業者に対して事前調査費用を支払わなければなりません。アスベスト調査を依頼するときは、アスベスト調査の実績があるか、有資格者の調査士がいるかを確認して業者を選びましょう。
まとめ
アスベストとは「石綿」とも呼ばれる天然の鉱物です。汎用性が高く様々な建築物に使用されていましたが、人体に悪影響があることが明らかになり、現在は使用・製造が中止されています。木造一戸建てでも、屋根や内装、外壁、床などにアスベストが使用されている可能性があり、特に規制が強化される前に建てられている場合は注意が必要です。すぐに健康被害があるわけではありませんが、リフォームや解体工事の費用が高くなったり、作業時に対策が必要になるでしょう。また売却をするときは、トラブルに発展しないよう、事前にアスベスト調査を実施しなければなりません。