建物を解体・リフォームするときは、アスベストの事前調査が必須です。とは言え「もしアスベストの事前調査をしなかったら?」と疑問に思っている方も多いでしょう。この記事では、アスベストの事前調査が必要な理由や、行わなかった場合どうなるのか、調査の流れ・費用を解説しています。建物の解体を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
アスベストの事前調査が必要な理由
アスベストは耐熱性や防音性に優れた繊維状の鉱物です。長らく建材として重宝されていましたが、アスベストを大量に吸い込むと、じん肺や中皮腫の原因になることが分かり、2006年以降は使用が禁止されています。しかし、2006年以前に建てられた建築物にはアスベストが使用されている可能性が高く、解体・リフォームの際にアスベストが飛散する恐れがあります。アスベストによる健康被害を防ぐために、解体・リフォームをするときは必ず事前調査を行わなければなりません。
アスベストの事前調査をしないとどうなる?
アスベストの事前調査は、大気汚染防止法によって実施が義務付けられています。もし調査を怠ると、30万円以下の罰金が科せられます。2023年10月からは、資格保有者による事前調査が必須となり、アスベストに関する法律は年々厳しくなっていると言えるでしょう。
アスベストの事前調査が不要となるケース
アスベストが含まれている可能性がある建物を解体するときは、必ず事前調査を実施しなければなりません。ただし、中には事前調査が不要なケースもあります。どのような場合に事前調査が不要となるのか、詳しく見ていきましょう。
素材などでアスベストが含まれていないことが明白な場合
木材・金属・石・ガラスには、アスベストは含まれていません。そのため、木材・金属・石・ガラスのみで構成されている建物を解体・リフォームする場合は、アスベストの事前調査は不要となります。
建材に損傷を与えない作業の場合
建材を削ったり切り落としたりする作業は、アスベストの飛散リスクが高いです。しかし、釘抜き・釘打ちなど建材に大きな損傷を与えない作業であれば、飛散リスクが低いため事前調査は必要ありません。ただし、電動工具を使用する場合は事前調査を行う必要があるため、注意しましょう。
材料の追加などが主となる作業の場合
上から再塗装や材料を追加する作業のみを行う場合も、アスベストの飛散リスクは低く事前調査は不要です。ただし、現在の塗装を剥がして再塗装する場合はアスベストが飛散する恐れがあるため、事前調査が必要となります。
アスベストの事前調査の流れと調査方法
続いては、アスベストの事前調査の流れを見ていきます。実際に調査を行うのは作業員・調査員ですが、施主側も調査方法を知っておくことで、スムーズに調査を進められるでしょう。
専門業者への調査依頼
まずは専門業者に事前調査の依頼を行います。2023年10月から有資格者による調査が義務付けられたため、依頼先に有資格者がいるかどうか確認しましょう。
調査計画の作成
調査に移る前に、作業計画を作成します。作業計画には、アスベストが排出する可能性がある作業を、どこで・どのように・どれくらいの期間行うのか正しく記載しなければなりません。今後の調査や作業は、必ず作業計画に従って進める必要があります。
書面調査
書面調査では、図面や設計書を確認してアスベストに関する情報を集めます。アスベストを使用した履歴はあるか、過去に改修をしたことがあるかなどを調査し、次の目視調査(現地調査)の流れを決定します。
目視調査(現地調査)
目視調査では、実際に現地に足を運んで建物の状態を確認します。図面と照らし合わせながら、内装や塗装の下地など細かいところもチェックしなければなりません。図面に書かれている構造と実際の建物の構造が違うこともしばしばあるため、見逃しのないように時間をかけて調査を進めます。
試料採取
アスベストが含まれている可能性がある建材の目星がついたら、建材の商品名や型番号を元に石綿含有建材データベースでアスベストの有無を調べます。それでもアスベストの有無が分からないときは、建材の一部分を採取して分析調査を行います。
分析調査
分析調査とは、持ち帰った建材を詳しく調査し、アスベストの有無を明らかにする調査です。分析調査には定性分析と定量分析の二種類があります。
定性分析
まず定性分析でアスベストの有無を調べます。定性分析でアスベストが含有されていないと分かった場合は、次に行う定量分析の必要はありません。
定量分析
定量分析では、建材にどのくらいアスベストが含まれているのかを分析します。ただし、アスベスト事前調査ではアスベストの有無が分かればいいため、基本的には定量分析の実施は不要です。
調査報告書の作成
分析結果が出たら、アスベストの有無に関わらず調査報告書を作成します。どのような調査を行ったのか、どのような結果が出たのか、その根拠は何なのかなど調査内容を詳しく記載しなければなりません。調査報告書は、労働基準監督署や各自治体に提出します。
アスベストの事前調査にかかる費用相場
アスベストの事前調査にかかる費用は、建物の状態や大きさによって変動します。一般的には、事前調査から分析調査まで行うと約7〜13万円が相場と考えておくとよいでしょう。以下の表が内訳の一例です。
内訳 | 費用相場 |
図面調査 | 約2~3万円 |
目視調査 | 約2~5万円 |
分析調査 | 約3~6万円/1検体 |
自治体によっては補助金制度を利用できることもあるため、事前調査を依頼する前に自治体のホームや窓口で確認しておきましょう。
信頼できるアスベスト調査会社の選び方
アスベストは健康に影響を及ぼす危険性があり、丁寧な事前調査が必要です。事前調査を実施するときは、以下のポイントを押さえて信頼できる調査会社を選びましょう。
見積もりの内訳を明示してくれる
依頼するアスベスト調査会社を選ぶときは、見積もりの内訳をしっかり確認しましょう。「どの調査に対して必要な費用なのか」「後から追加料金が発生する可能性はあるか」など、疑問に思うことは事前に質問することも大切です。説明が不十分な会社は、適切な段階を踏まずに調査を行う可能性があります。また、2〜3社に見積もりを出してもらい、安すぎる・高すぎる会社は避けた方がよいでしょう。費用に納得でき、安心して任せられると感じた会社に調査を依頼しましょう。
事前調査に必要な資格を保有している
前述したように、2023年10月からは有資格者のアスベスト事前調査が必須となりました。会社のホームページなどを確認し、資格保有者が在籍しているかチェックしておきましょう。事前調査を行うためには以下の3つの内いずれかの資格が必要です。
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一戸建て等石綿含有建材調査者
調査の実績や報告書の作成実績が豊富
アスベストの調査実績や報告書の作成実績がある会社は、ホームページなどに実績を記載していることが多いです。アスベストの事前調査は慎重な作業が求められるため、経験豊富な会社に依頼するのが安心でしょう。その後の解体工事をスムーズに進行するためにも、最初の段階で信頼できる会社かどうかを見極めておく必要があります。
まとめ
アスベストは健康に被害を及ぼす可能性がある、危険な鉱物です。そのため建物を解体・リフォームするときは、必ず有資格者による事前調査を行わなければなりません。もし調査を怠った場合は、30万円以下の罰金が科せられます。ただし、素材や作業内容によっては事前調査が不要なケースもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。アスベストの事前調査は、調査計画の作成、書面調査、目視調査の流れで行い、必要に応じて分析調査を行います。調査が終了した後は、アスベストの有無に関わらず調査報告書を作成・提出する必要があります。アスベストの事前調査にかかる費用相場は、約7〜13万円で、調査を依頼する会社を選ぶときは、見積もりの内訳や過去の調査実績を確認し、信頼できる会社かどうかをしっかり見極めましょう。