こんにちは!中四国でアスベスト(石綿)調査・除去工事をおこなっています西日本アスベスト調査センター(NARC)のブログ担当です。
近年、「アスベスト(石綿)調査が義務化された」というニュースを耳にし、建物の解体や改修工事を控えている方の中には、「具体的に何をすればいいのだろう?」「費用はどれくらいかかるのか?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
アスベストは、過去に多くの建築物に使用されていましたが、その繊維を吸い込むことで中皮腫や肺がんといった重篤な健康被害を引き起こすことが分かっています。
そのため、解体・改修工事の際にアスベストが飛散するのを防ぐための「アスベスト(石綿)調査」は、作業者や周辺住民の健康を守るために非常に重要な工程です。
この記事では、2023年10月からの有資格者による調査義務化など、最新の法改正を踏まえたアスベスト(石綿)調査のすべてを、具体的な流れ、対象となる工事、費用相場、そして補助金制度まで、分かりやすく徹底的に解説します。
この記事を読んでいただくことで、アスベスト調査の義務内容を正確に理解し、安全かつ法令を遵守した形で工事を進めるための準備が整います。
「解体工事を検討している建物の所有者・管理者の方」「アスベスト調査の費用や手続きについて詳しく知りたい方」「法令違反による罰則を避けたいと考えている方」はぜひ最後まで読んでみてください!
アスベスト(石綿)調査の義務化はいつから?法律改正の背景
アスベスト(石綿)調査は、段階的な法改正を経て、現在では解体・改修工事を行う際の必須事項となっています。
この義務化の最大の目的は、アスベストが飛散することによる作業員や周辺住民の健康被害を未然に防ぐことです。
なぜアスベスト(石綿)調査が義務化されたのか
アスベストは「奇跡の鉱物」とも呼ばれ、断熱性、耐火性、防音性に優れていたため、1970年代から1990年代にかけて、多くの建築物の建材として広く使用されていました。
しかし、アスベストの極めて細い繊維を吸入すると、数十年という長い潜伏期間を経て、中皮腫や肺がんなどの致死的な健康障害を引き起こすことが判明しました。
この深刻な健康被害を防ぐため、日本では2006年にアスベストの製造、輸入、使用が全面的に禁止されました。しかし、それ以前に建てられた多くの建物にはまだアスベスト含有建材が残存しており、それらの建物を解体したり改修したりする際に、アスベストが空気中に飛散するリスクが高まります。
このリスクを最小限に抑えるため、工事前に必ずアスベストの有無を特定するための調査が法律で義務付けられました。
アスベスト(石綿)調査の義務化の主な変遷
アスベスト調査に関する主な法律の改正と義務化の時期は、以下の通り段階的に進められています。
施行時期 | 法令の主な改正内容 | 関連法規 |
2021年4月1日 | 全ての解体・改修工事における事前調査の義務化(規模を問わず) | 大気汚染防止法・石綿障害予防規則 |
2022年4月1日 | 一定規模以上の工事における調査結果の「報告」義務化 | 大気汚染防止法 |
2023年10月1日 | 事前調査を「有資格者」が行うことの義務化 | 石綿障害予防規則 |
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特に、2023年10月1日からは、アスベスト調査は専門の資格を持つ者(建築物石綿含有建材調査者など)でなければ実施できなくなり、調査の信頼性と厳格性が大幅に向上しました。
これにより、無資格者による調査は法令違反となるため、建物の所有者や元請業者(解体・改修工事の依頼者)は、有資格者に調査を依頼することが必須となりました。
アスベスト(石綿)調査が義務化される「対象工事」と「対象外の例外」
アスベスト(石綿)調査は、原則として全ての建築物における解体・改修工事が対象となりますが、特に調査結果の行政への「報告」義務が発生する工事には規模の要件があります。
報告義務が発生する「対象工事」の要件
アスベスト含有建材の有無にかかわらず、調査結果を行政(労働基準監督署、都道府県など)に電子報告することが義務付けられている工事の具体的な要件は、以下の通りです。
工事の種類 | 報告義務の対象となる規模要件 |
解体工事 | 解体作業対象の床面積の合計が80平方メートル以上の建築物 |
改修工事 | 請負代金の合計額が100万円以上(税込)の建築物(※) |
特定工作物 | 総トン数20トン以上の船舶(鋼製の船舶に限る)など、特定の工作物 |
※改修工事の請負代金には、アスベスト調査費用や除去費用は含まれません。
この報告義務は、解体や改修の元請業者に課せられますが、最終的には建物の所有者・管理者の責任も問われるため、依頼主としても報告が適切に行われているかを確認することが重要です。
アスベスト(石綿)調査の「対象外の例外」
原則すべての工事で事前調査が必要ですが、以下の場合は調査の**「対象外」となるか、または「調査の一部が不要」**と見なされます。
- 2006年9月1日以降に着工された建物:アスベスト建材の製造・使用が全面的に禁止された後に建てられた建物は、アスベスト含有建材が使用されていないことが設計図書などで明らかな場合、調査が不要となることがあります。ただし、増改築履歴がある場合はその部分の確認が必要です。
- 調査対象の建材が非石綿であると証明できる場合:メーカーの証明書などにより、対象の建材がアスベストを含んでいないことが確認できる場合は、その建材に対する分析調査は不要となることがあります。
- 建築材を「アスベスト含有」と「みなし判定」する場合:分析調査を省略し、その建材を最初からアスベスト含有建材と見なして、法令に基づいた除去工事を行う場合は、分析調査が不要となります。ただし、書面調査と目視調査は必須です。
小規模な工事(戸建て住宅の解体や小規模なリフォーム)であっても、事前調査自体は義務ですので、規模に関わらず専門家に相談することが最も確実です。
アスベスト(石綿)調査を行う「有資格者」の要件と種類
2023年10月1日以降、アスベスト(石綿)調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了し、特定の資格を持つ有資格者が行うことが義務付けられました。これにより、調査の質が担保され、正確な判定が期待されます。
アスベスト(石綿)調査に必要な主な資格
アスベスト事前調査を実施できる主な有資格者は、以下の3種類です。
資格の名称 | 調査できる範囲 |
特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者) | すべての建築物(戸建て住宅、共同住宅、特定建築物など) |
一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者) | 特定建築物以外のすべての建築物(戸建て住宅、共同住宅など) |
一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て調査者) | 一戸建て住宅及び共同住宅の住戸の内部 |
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建物の種類や規模によって、調査者が持つべき資格が細かく定められています。特に、特定建築物石綿含有建材調査者は、すべての建築物の調査に対応できる上位資格となります。
なぜ有資格者による調査が義務化されたのか?
かつては、アスベスト調査について具体的な資格要件がなく、調査結果の信頼性が問題となるケースがありました。不適切な調査によってアスベストの存在が見落とされ、その結果、飛散事故や健康被害が発生するリスクがあったのです。
有資格者による調査が義務化されたことで、調査者はアスベストに関する専門知識、建築に関する実務経験、そして法令に関する知識を持っていることが保証されます。これにより、アスベスト含有建材の見落としを防ぎ、工事を安全に進めるための基盤が確立されます。
私たちが担当した工事の例でも、過去の調査報告書が不十分で、現地調査の際に新たにアスベスト含有建材が発見されたケースがありました。この経験から、信頼できる有資格者に依頼することの重要性を痛感しています。
アスベスト(石綿)調査の具体的な流れと手順
アスベスト(石綿)調査は、主に「書面調査」「目視調査」「分析調査」の3つのステップで構成され、この手順を正確に踏むことで、アスベストの有無を特定します。
1. アスベスト調査の依頼と準備
まず、解体・改修工事の元請業者または建物の所有者・管理者が、有資格者が在籍する専門の調査業者に依頼します。
- 契約と打ち合わせ:調査の目的(解体か改修か)、建物の概要、図面の有無などを確認します。
- 必要資料の準備:建物の設計図書、竣工図、改修履歴に関する資料など、可能な限り多くの情報を調査業者に提供します。
2. 書面調査(第一次スクリーニング)
調査の第一段階は、現地に行かずに、提供された書類を基に行われます。
- 図面・資料の確認:建物の築年数や構造、使用されている建材の種類から、アスベスト含有の可能性がある建材(特定建築材料)を特定します。
- 着工日による判定:建材メーカーのカタログや資料と照らし合わせ、使用された時期や材料からアスベスト含有の可能性をスクリーニングします。
- メリット:過去の情報を基に、現地調査でどこを重点的に見るべきかを絞り込めるため、調査の効率を高めます。また、図面に記載されている建材のメーカーや品番から、含有の有無を推定することが可能です。
- デメリット:図面が残っていなかったり、改修工事で図面と現況が異なっていたりする場合、書面調査だけでは正確な判断ができません。
3. 現地・目視調査(第二次スクリーニング)
次に、有資格者が実際に現地に赴き、建物を目視で確認します。
- 書面調査との照合:書面で特定した建材と、実際の建材が一致するかを確認します。
- 建材の破損・劣化の確認:目視で確認できる全ての建材(壁材、天井材、屋根材、配管の断熱材など)に対し、アスベスト含有の可能性が高い箇所を特定します。
- サンプリング箇所の選定:アスベスト含有が疑われる建材について、分析調査を行うためにサンプルを採取する箇所を決定します。
- メリット:図面と現況の不一致を発見し、書面調査では分からなかった隠れたアスベスト含有建材の可能性を特定できます。経験豊富な調査者による目視調査は、分析調査の要否判断に直結します。
- デメリット:建材の内部や手の届かない高所など、目視できない箇所については判断ができません。
4. 分析調査(最終判定)
目視調査でアスベスト含有が疑われる建材については、サンプルを採取し、専門の分析機関で分析を行います。
- サンプルの採取:建材の一部を採取し、外部に飛散しないよう厳重に梱包して分析機関に送付します。
- 定性分析:アスベストの有無を判別します(0.1%を超えて含有しているか)。
- 定量分析:アスベストの含有率を正確に測定します。
- メリット:この分析結果によって、アスベスト含有建材であるか否かの最終的な科学的判断が下されます。正確なデータに基づいて、その後の除去・飛散防止対策の計画を立てることができます。
- デメリット:分析費用と時間がかかります。
5. 事前調査報告書の作成と提出
調査結果に基づき、事前調査報告書を作成します。
- 報告書の作成:調査方法、結果、分析写真、アスベスト含有建材の場所と種類などを詳細に記載します。
- 行政への報告:一定規模以上の工事(前述)の場合、工事開始の14日前までに、電子システム(石綿事前調査結果報告システム)を通じて労働基準監督署や都道府県に調査結果を報告します。
- 書類の保管:調査結果の記録は、工事完了後3年間の保管が義務付けられています。
アスベスト(石綿)調査の「書面調査」「目視調査」「分析調査」の内容
アスベスト(石綿)調査の3つのステップ、特に「書面調査」「目視調査」「分析調査」は、それぞれが異なる役割を持ち、相互に補完し合うことで、正確なアスベストの有無を特定します。
1. 書面調査の具体的な確認項目
書面調査は、机上で行う調査であり、アスベスト含有の可能性を絞り込むための最初のステップです。
- 図面情報の確認:
- 竣工図・設計図書:建物の新築時期、使用された建材の品番、工法などを確認し、アスベスト使用が疑われる時期(1988年以前)に建てられたか、またはアスベスト含有建材リストに含まれる建材が使われていないかを推定します。
- 改修履歴:過去のリフォームや増改築の記録を確認し、その際に使用された建材についても調査します。
- メーカー情報の照合:図面に記載された建材の品番やメーカー名から、アスベスト含有の有無をメーカーのカタログやデータベースで照合します。
2. 目視調査で確認すべき重要箇所
目視調査は、書面調査の結果と現地の状況を一致させるための重要なステップです。書面調査で「アスベスト含有の可能性あり」と判断された箇所だけでなく、図面に記載されていない建材や、経年劣化により図面と異なっている箇所も徹底的に確認します。
- 重点確認箇所(アスベスト含有可能性が高い場所):
- 吹付け材:天井や梁、柱などに吹付けられた綿状の材料(レベル1建材)。
- 保温材:ボイラー、配管、ダクトなどに使用されている断熱材(レベル2建材)。
- 成形板:屋根材(スレート板)、外壁材(サイディング)、天井材(石膏ボード裏の吸音板など)といった板状の建材(レベル3建材)。
- 見落としやすい箇所:
- 目地や隙間のパテ材、タイルの接着剤、配管のジョイント部分など、少量でもアスベストが使われている可能性がある場所も見逃さずにチェックします。
3. 分析調査の種類と費用の目安
目視調査の結果、アスベスト含有が疑われる建材については、分析調査に進みます。分析調査には主に「定性分析」と「定量分析」があります。
- 定性分析:
- 内容:建材の中にアスベストが含まれているか「はい」か「いいえ」を判別する分析です。
- 費用相場:1検体あたり約1万円〜5万円程度(分析期間によって変動)。
- 定量分析:
- 内容:定性分析でアスベストが検出された場合、その含有率が0.1重量パーセントを超えているかを正確に測定する分析です。この0.1%が法的な規制の基準となります。
- 費用相場:1検体あたり約3万円〜5万円程度。
私の経験談として、以前、書面調査ではアスベスト含有の記載がなかった建物で、目視調査の際に古い配管の継ぎ目のパテ材が気になり、分析調査を依頼したところ、微量ですがアスベストが検出されたことがありました。このように、経験に基づく目視判断は、分析調査の要否判断において非常に重要な役割を果たします。
アスベスト(石綿)調査にかかる費用の相場と内訳
アスベスト(石綿)調査を専門業者に依頼する際にかかる費用は、建物の規模、構造、築年数、そして何検体のサンプルを分析するかによって大きく変動します。ここでは、調査費用の相場と内訳を具体的に解説します。
アスベスト(石綿)調査の費用相場(建物規模別)
建物の種類・規模 | 調査費用の目安(税別) | 備考 |
小規模建物(戸建て住宅の一部・小規模なリフォーム) | 約5万円〜15万円程度 | 書面・目視調査と数検体の分析を含む |
中規模建物(一般的な戸建て住宅全体・中小ビルの一部) | 約15万円〜30万円程度 | 書面・目視調査と10検体程度の分析を含む |
大規模建物(工場・商業施設・ビル全体など) | 約30万円〜数百万円 | 広範囲の調査、多数の分析検体数により変動 |
上記の費用はあくまで目安であり、建物の劣化状況や図面の有無、アクセス困難な箇所の有無など、現場の状況によって変動することを理解しておく必要があります。
調査費用の主な内訳
アスベスト調査費用は、大きく分けて以下の3つの要素で構成されています。
1. 事前調査費(書面調査・目視調査)
- 費用目安:約5万円〜15万円程度
- 内容:有資格者による設計図書などの確認、現地での建材の目視確認、サンプリング箇所の選定にかかる費用です。調査員の出張費や人件費も含まれます。
2. 分析調査費(定性分析・定量分析)
- 費用目安:1検体あたり約4万円〜15万円程度
- 内容:目視調査で特定された疑わしい建材のサンプルを採取し、専門の分析機関でアスベスト含有の有無や含有率を測定するための費用です。検体数が多ければ多いほど、総額は高くなります。
3. 報告書作成費・行政報告費
- 費用目安:約2万円〜5万円程度
- 内容:調査結果をまとめた事前調査報告書の作成費用や、行政への報告手続きにかかる費用です。一定規模以上の工事では行政への電子報告が義務付けられています。
調査費用を抑えるための注意点
依頼者として調査費用を適切に抑えるためには、以下の点に注意して調査業者と打ち合わせることが重要です。
- 詳細な図面を提供する:図面が残っていれば、書面調査の精度が上がり、目視調査や分析調査の範囲を絞り込めるため、費用の削減につながります。
- 解体・改修の範囲を明確にする:工事の対象となる建材や範囲が明確であれば、調査範囲を限定できるため、無駄な調査を省けます。
- みなし判定の活用:分析費用を抑えるため、疑わしい建材をあえて「アスベスト含有」と見なし(みなし判定)、除去費用に組み込むという選択肢もあります。ただし、この場合、除去費用は高くなる可能性があります。
アスベスト(石綿)調査で活用できる国や自治体の「補助金・助成金」
アスベスト(石綿)調査の費用負担を軽減するため、国や地方自治体では補助金・助成金制度を設けています。これらの制度を積極的に活用することで、実質的な費用負担を大幅に減らすことが可能です。
国による補助金制度の概要
国土交通省では、アスベストによる健康被害の防止と、建物の安全性を確保するために、アスベスト調査・除去等に対する支援制度を設けています。
- 対象建築物:吹付けアスベスト等が施工されているおそれのある住宅・建築物(主にレベル1建材が対象となるケースが多い)
- 補助内容:吹付け建材中のアスベストの有無を調べるための調査に要する費用
- 国の補助率:限度額は原則として25万円/棟(地方公共団体を経由して支給)
この国の補助金を受けるためには、地方自治体が補助制度を実施していることが前提となります。
地方自治体(岡山・広島など中四国エリア)の補助金例
地方自治体の補助金制度は、国からの支援に加え、自治体独自の支援が上乗せされる場合が多く、各自治体によって対象や補助額が異なります。
- 補助対象となる調査:多くの自治体で、吹付けアスベスト(レベル1建材)やアスベスト含有吹付けロックウールなどの高リスク建材の調査が対象となっています。一部の自治体では、アスベスト含有建材の除去工事費用に対しても補助金が出ます。
- 補助額:国の制度と同様に上限25万円/棟としている自治体が多いですが、独自の基準を設けている場合もあります。
- 申請窓口:基本的に各自治体(市町村役場など)の建築・環境関連部署が窓口となります。
具体的な例として、ある中四国エリアの市では、特定のリスクの高い建材調査に対して、費用の一部を補助する制度が設けられています。
補助金申請のメリットとデメリット
項目 | メリット | デメリット |
メリット | 調査費用の負担を大幅に軽減できるため、費用を理由に調査を躊躇することがなくなります。法令遵守を促し、安全な解体・改修工事に繋がります。 | |
デメリット | 申請期間や予算に限りがあるため、タイミングを逃す可能性があります。申請手続きが複雑で、提出書類が多く、時間と手間がかかる場合があります。 |
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補助金申請は、着工前に済ませる必要があるなど、期日が厳密に定められています。アスベスト調査を検討し始めたら、すぐに自治体のウェブサイトを確認するか、アスベスト調査実績のある専門業者に相談し、最新の情報を確認することをおすすめします。
アスベスト(石綿)調査の結果報告が義務化された背景と報告方法
アスベスト(石綿)調査の結果報告は、単なる調査義務だけでなく、行政が工事の安全性を把握し、国民の健康を守るための重要な手続きです。
報告義務化の背景にある課題
2021年4月の事前調査義務化後も、調査結果が行政に適切に共有されず、アスベスト含有建材が見過ごされたまま工事が進められるリスクが残っていました。行政が事前にアスベストの有無を把握できていなければ、適切な飛散防止対策がなされているかを確認することが困難です。
この課題を解決するため、2022年4月1日からは、一定規模以上の工事について、アスベスト調査の結果を工事開始の14日前までに行政へ報告することが義務化されました。これにより、行政は、アスベスト含有建材が使用されている建物の工事について、より厳格な指導・監督を行うことが可能となりました。
事前調査結果の報告方法
報告は、原則として「石綿事前調査結果報告システム」と呼ばれる電子システムを通じて行います。
- 報告主体:解体・改修工事の元請業者
- 報告先:労働基準監督署と都道府県(大気汚染防止法政令市を含む)
- 報告期限:工事開始日の14日前まで
報告システムを利用することで、元請業者は一度の入力で複数の行政機関への報告を完了させることができます。報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合は、罰則の対象となるため、元請業者はこの義務を確実に履行しなければなりません。
アスベスト(石綿)調査を怠った場合の罰則と行政処分
アスベスト(石綿)調査の義務を怠ることは、単に健康被害のリスクを高めるだけでなく、法令違反として重い罰則や行政処分の対象となります。建物の所有者や元請業者は、そのリスクを十分に理解しておく必要があります。
労働安全衛生法・大気汚染防止法による罰則
アスベスト調査に関する義務は、主に「労働安全衛生法」と「大気汚染防止法」という2つの法律で規定されており、違反した際の罰則も両法に定められています。
違反行為 | 根拠法 | 罰則の内容 |
事前調査の未実施・不十分な調査 | 労働安全衛生法 | 50万円以下の罰金 |
調査結果の行政への未報告・虚偽報告 | 大気汚染防止法 | 30万円以下の罰金 |
アスベスト飛散防止措置の不履行 | 大気汚染防止法 | 3月以下の懲役または30万円以下の罰金(直接罰) |
特に、2021年の法改正により、アスベストの飛散防止措置に関する義務違反は、改善命令を待たずに直接罰則が適用されることになりました。これは、アスベスト飛散の危険性が極めて高いと判断されたことの表れです。
罰則以外の重大なリスク
罰則以外にも、アスベスト調査を怠ることは、事業の継続に関わる以下の重大なリスクを伴います。
- 工事停止命令:行政の立ち入り検査などで法令違反が発覚した場合、工事の停止命令が出されることがあります。これにより、工期遅延や追加の費用発生は避けられません。
- 社会的信用の失墜:法令違反が公になれば、企業や事業主としての社会的信用が大きく失墜し、今後の受注や事業継続に深刻な影響を及ぼします。
- 民事訴訟のリスク:アスベスト飛散により、作業員や周辺住民に健康被害が発生した場合、損害賠償を求める民事訴訟を起こされる可能性があります。
私たちが日頃感じるのは、事前調査にかかる費用や手間を惜しんだ結果、後から法令違反が発覚し、数百万円単位の追加費用や工期の大幅な遅延が発生するケースです。最初から適切なアスベスト調査を行うことが、最も経済的で安全な道であると断言できます。
失敗しないアスベスト(石綿)調査業者の選び方
アスベスト(石綿)調査の成功は、依頼する業者の質に大きく左右されます。正確な調査と確実な行政手続きのために、信頼できる専門業者を選ぶことが極めて重要です。
チェックすべき4つの重要ポイント
アスベスト調査を依頼する際に、必ずチェックすべきポイントは以下の4点です。
1. 有資格者が在籍しているか
2023年10月1日以降、アスベスト調査は「建築物石綿含有建材調査者」などの有資格者が行うことが義務付けられています。依頼を検討している業者が、どの資格を持つ調査者を何名体制で保有しているかを必ず確認しましょう。
2. 調査実績と専門性が豊富か
調査実績が豊富であるほど、様々な建物の構造やアスベスト含有建材の種類に対応する経験とノウハウを持っています。特に、図面がない古い建物や複雑な構造の建物の調査実績が多い業者を選ぶべきです。
3. 適正な費用で明確な見積もりを提示するか
見積もりの内訳が「書面調査費」「目視調査費」「分析調査費(検体数)」など、項目ごとに明確に示されているかを確認しましょう。「一式」で済ませる業者は、後から追加費用が発生するリスクがあるため注意が必要です。また、相場よりも極端に安すぎる業者は、調査内容が不十分である可能性があるため、避けるのが賢明です。
4. 行政への報告義務まで代行してくれるか
一定規模以上の工事では、調査結果の行政への報告(労働基準監督署、都道府県)が義務付けられています。報告手続きを元請業者に代わって、責任を持って行ってくれる業者を選ぶことで、法令違反のリスクを軽減できます。
調査業者に確認すべき質問例
- 「御社には、どの種類の石綿含有建材調査者が何名在籍していますか?」
- 「私たちの建物の規模で、過去にどれくらいの調査実績がありますか?」
- 「分析機関はどこを利用されていますか?(信頼性の高い分析機関を選んでいるか)」
- 「調査結果の行政への電子報告まで含めて対応いただけますか?」
まとめ
アスベスト(石綿)調査は、単なる手続きではなく、解体・改修工事の安全を担保し、人々の健康を守るための極めて重要な義務です。
2023年10月1日からは、有資格者による調査が義務化され、調査の厳格性が高まりました。
この記事では、アスベスト調査の義務化の背景から、解体・改修工事の対象となる規模(解体80m²以上、改修100万円以上)、書面・目視・分析の具体的な調査手順、そして罰則のリスクについて詳しく解説しました。
特に、調査費用の相場(戸建てで15万〜30万円程度)を理解し、国や自治体の補助金制度(上限25万円/棟など)を積極的に活用することが、コストを抑える鍵となります。
法令を遵守し、安全かつスムーズに工事を進めるためには、信頼できる有資格者のいる専門業者に早期に相談することが何よりも重要です。
中四国エリア【兵庫含む】(岡山・広島・山口・島根・鳥取・香川・徳島・愛媛・高知)でのアスベスト調査・除去を検討している方は、迅速な対応で選ばれている西日本アスベスト調査センター(NARC)の記事を参考にしてくださいね!
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