アスベスト(石綿)石膏ボード
こんにちは!中四国でアスベスト(石綿)調査・除去工事をおこなっています西日本アスベスト調査センター(NARC)のブログ担当です。
「解体予定の建物に石膏ボードがあるけれど、石綿が含まれているかどうかわからない」「石綿石膏ボードは他の石綿建材と比べて危険度が低いと聞いたが本当だろうか?」と、あなたは今、大きな不安を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
石綿石膏ボードは、かつて多くの建物に使用されていましたが、その取り扱いに関する正しい情報が不足しているため、解体・改修工事を控えた方々がどのように対応すればよいか迷ってしまうのは当然のことです。
この記事では、石綿石膏ボードに特化し、その基本的な知識、他の建材との比較から、最新の調査義務、そして適正な除去・処分にかかる費用相場まで、石綿の専門家である西日本アスベスト調査センター(NARC)が徹底的に解説します。
この記事を読むと、何が分かるのか。
- 石綿石膏ボードの正確な定義と使用されていた年代
- 石綿石膏ボードの他の石綿建材と比較した危険性のレベル
- 解体・改修工事における石綿石膏ボードの調査義務と法的な規制
- 石綿石膏ボードの除去・処分にかかる具体的な費用と相場
- 安全かつ適法に石綿石膏ボードに対応するための具体的な手順
この記事は、建物の解体・改修工事を発注する施主様、石綿調査や除去を適正に行いたい解体工事業者様、そして建物の所有者様や管理会社様など、石綿石膏ボードの正しい知識と具体的な対応策を知りたい方はぜひ最後まで読んでみてください!
石綿石膏ボードとは?基本的な知識と含有の歴史
石綿石膏ボードとは、芯材である石膏ボードの中に石綿(アスベスト)が混ぜ込まれていた建材のことです。石膏ボードは壁や天井などの内装材として広く使用されてきた建材であり、石綿を含有することで耐火性や強度を高める目的で製造されていました。しかし、健康被害のリスクから、現在は石綿の使用が禁止されています。解体工事や改修工事を行う際には、この石綿石膏ボードが使用されているかどうかを事前に調査することが、法令によって義務付けられています。
石綿石膏ボードが製造・使用されていた時代的背景
石綿石膏ボードが国内で製造・使用されていた時期は、主に1970年代後半から1990年代初頭にかけてです。具体的には、1980年代に製造された建物で特に使用されている可能性が高い建材です。これは、当時の建設需要の高まりと共に、安価で高性能な建材が求められていた時代背景があります。石綿が本格的に健康問題として認識され、法律による規制が強化され始めたのは1990年代に入ってからです。したがって、1990年代初頭以前に建てられた建物、特に大規模な施設や公共の建物では、石綿石膏ボードの存在を強く疑う必要があります。
一般的な石膏ボードと石綿石膏ボードの違い
一般的な石膏ボードと石綿石膏ボードの最も大きな違いは、石綿を含有しているかどうかという点です。見た目だけでは、石膏ボードに石綿が含有されているかどうかを判別することは非常に困難です。石綿が混ざっているからといって、色が違ったり、特有の模様があったりするわけではありません。
このため、石綿石膏ボードの有無を正確に判断するためには、必ず専門の調査者による分析調査が必要です。
- 目視: プロの調査員は、ボードの裏側のメーカーの刻印や製造ロット番号など、目視で確認できる情報を収集します。これは、メーカーが石綿を使用していた時期と照らし合わせるための重要な手がかりになります。
- サンプリング: 建材の一部を採取し、分析機関で偏光顕微鏡などを用いた定性分析を行います。この分析によって、石綿の種類と含有率が正確に特定されます。
- 材質: 石綿が使用されていた石膏ボードは、主に増強や耐火性を向上させるために使用されていました。そのため、通常の石膏ボードと比較して、若干密度が高いなどの特徴が見られることもありますが、これもあくまで目安の一つに過ぎません。
このように、石綿石膏ボードの識別には、専門的な知識と正確な分析が不可欠であり、解体・改修工事の際は自己判断せずに調査を依頼することが大切です。
石綿石膏ボードの危険性(飛散リスク)を正確に理解する
石綿石膏ボードの最大の関心事は、その危険性、特に石綿の飛散リスクです。石綿石膏ボードは、石綿を多く含む他の建材(例えば、吹き付け石綿など)と比較して、危険度が低いとされる理由があります。しかし、「危険度が低い」=「安全」ではありません。石綿石膏ボードが持つリスクを正確に理解し、適切な対策を講じることが重要です。
石綿石膏ボードの石綿含有量と発じん性のレベル
石綿石膏ボードは、労働安全衛生法などの法令に基づく石綿建材の発じん性(飛散性)の分類では、主にレベル3に分類されます。このレベル分類は、石綿繊維が空気中に飛散しやすい度合いを示しています。
| レベル | 発じん性(飛散性) | 主な石綿建材の例 |
| レベル1 | 極めて高い | 吹き付け石綿 |
| レベル2 | 高い | 石綿含有保温材、耐火被覆材など |
| レベル3 | 比較的低い | 石綿含有成形板(石膏ボード、ビニル床タイルなど) |
石綿石膏ボードがレベル3に分類される理由は、石綿がセメントや石膏などの硬い基材の中に閉じ込められて固まっているためです。石綿繊維が物理的にボードの内部に固定されているため、建材が破壊されない限り、石綿が飛散するリスクは非常に低いとされています。しかし、石綿が含有されている事実は変わらないため、取り扱いには細心の注意が必要です。
通常使用時と解体・破壊時の石綿石膏ボードのリスク比較
石綿石膏ボードが壁や天井材として建物内に安定した状態で使われている場合、石綿繊維が空気中に飛散するリスクはほとんどありません。石膏ボードの表面に石綿が露出しているわけではなく、石膏によって強固に固められているからです。通常の使用環境下では、住民や利用者の健康に影響を及ぼす可能性は極めて低いと言えます。
しかし、解体工事や改修工事で石膏ボードを切断したり、破砕したりする際には、状況が一変します。
- 破壊によるリスク増大: ボードをハンマーで叩き割る、電動のこぎりで切断するといった行為は、石膏の結合を破壊し、内部に閉じ込められていた石綿繊維を粉じんとして空気中に放出させる原因となります。
- 作業者と周辺環境への影響: 飛散した石綿粉じんは、作業者だけでなく、周辺環境や近隣住民にも健康被害をもたらす可能性があります。そのため、石綿石膏ボードの撤去作業は、湿潤化や隔離養生といった適切な飛散防止措置を講じたレベル3の作業基準に従って行うことが法律で義務付けられています。
石綿石膏ボードのリスクは「作業を行うか否か」で大きく変わるため、工事発注者はこの点を深く理解しておく必要があります。
石綿石膏ボードの調査義務と法規制の最新情報
石綿石膏ボードはレベル3建材ですが、2022年4月以降の大気汚染防止法などの改正により、解体・改修工事における事前調査は義務化されています。この義務化は、建築物の大小や石綿の飛散性の高低にかかわらず適用され、石綿石膏ボードも例外ではありません。工事の発注者や元請業者は、この法規制を遵守する責任を負っています。
建築物石綿含有建材調査者の役割と石綿石膏ボード調査のポイント
法改正により、一定規模以上の解体・改修工事では、建築物石綿含有建材調査者(通称:石綿調査者)の資格を持つ者が事前調査を実施することが義務付けられました。この調査者は、石綿に関する専門的な知識と技術を持ち、石綿石膏ボードなどの建材の含有有無を適切に判断する役割を担います。
石綿石膏ボードの調査における重要なポイントは以下の通りです。
- 目視調査の徹底: 製造時期や建材の種類、使用部位などから、石綿石膏ボードの含有可能性を絞り込みます。
- 分析調査の実施: 目視で石綿含有の有無が判断できない場合は、必ずサンプルを採取し、専門の機関で分析を行う必要があります。石膏ボードは種類が多いため、少しでも疑いがあれば分析を省略しないことが重要です。
- 結果の記録と保管: 調査結果は記録し、3年間保管する義務があります。また、調査結果は工事現場に掲示し、作業員や関係者に周知徹底する必要があります。
石綿石膏ボードの有無を判断する際の具体的な確認事項
石綿石膏ボードの有無を判断するためには、以下の具体的な手順と確認事項を実行します。このプロセスによって、後の工事における手戻りや法令違反のリスクを大幅に減らすことができます。
- 図書調査: 最優先で建築時の図面、仕様書、増改築の記録などを確認します。石膏ボードのメーカー名や品番、施工された年代がわかれば、石綿の含有有無を推測する有力な手がかりとなります。
- 特定建材データベースの活用: 国や建材メーカーが公開している石綿含有建材のデータベースと、図書で確認した品番を照合します。これにより、高確率で石綿含有の有無が特定できます。
- 現地での詳細な目視: 図書で判断できなかった場合、現地で石膏ボードの層構造や厚み、裏面の刻印などを詳細に確認し、石綿調査者がサンプリングの箇所を決定します。
ライターの実体験風エピソード:
ある改修工事の際、図書調査で石膏ボードが特定できなかったケースがありました。現地でボードの一部を剥がしたところ、通常とは異なる繊維質の層が確認されました。すぐに分析調査を行った結果、石綿が検出されました。図書調査が不十分であっても、現地での石綿調査者による徹底した目視と経験に基づく判断が、結果的に法令遵守と作業員の安全確保につながった事例です。石綿石膏ボードの調査は、まさに目視と分析のセットで初めて完結すると言えます。
石綿石膏ボードの除去・処分にかかる費用と工期の相場
解体・改修工事における石綿石膏ボードへの対応で、発注者が最も気になるのが費用と工期です。石綿石膏ボードの除去費用は、一般的な建材の撤去費用と比較して高くなりますが、これは石綿の飛散防止と安全な処分にかかる特別な措置が必要になるためです。適正な費用相場を知ることは、不当な高額請求を防ぐ上で非常に重要です。
石綿石膏ボードの除去工事費用の内訳と相場(平米単価)
石綿石膏ボードの除去費用は、主に以下の要素で構成されます。ここでは一般的な目安としての相場を提示しますが、建物の状況(高さ、立地、交通量など)により変動することを理解しておいてください。
| 費用の内訳 | 費用の目安(平米単価) | 具体的な内容 |
| 調査・届出費用 | 約5万円~30万円/件 | 事前調査費用、行政への計画届出作成・提出費用 |
| 養生・隔離費用 | 約1,000円~3,000円/㎡ | 作業区画の隔離、湿潤化措置、専用機材の設置 |
| 除去作業費用 | 約4,000円~8,000円/㎡ | 作業員の賃金、保護具、特別管理産業廃棄物としての梱包作業 |
| 運搬・処分費用 | 約5,000円~10,000円/㎡ | 特別管理産業廃棄物としての専用運搬、中間処理・最終処分費 |
| 合計相場 | 約10,000円~20,000円/㎡ | ※上記の石膏ボードの撤去面積あたりの目安 |
石綿石膏ボードはレベル3建材であり、比較的飛散リスクが低いものの、特別管理産業廃棄物として厳重な取り扱いと処分が義務付けられているため、処分費用が高くなります。
メリット:
- 適正な処理: 石綿の知識を持つ専門業者が特別管理産業廃棄物として適切に処理するため、発注者は法令違反のリスクを負いません。
- 健康被害防止: 厳重な養生と湿潤化により、作業員や周辺住民への石綿粉じんによる健康被害を防止できます。
- 追加費用の防止: 事前の徹底した調査と正確な見積もりにより、工事途中の石綿発覚による大幅な工期遅延や追加費用の発生を防げます。
- 安全な建物: 適切に石綿石膏ボードが除去されることで、将来にわたって石綿リスクのない安全な建物を引き渡すことが可能になります。
石綿石膏ボードの処分方法と産業廃棄物としての分類
石綿石膏ボードは、石綿を含んでいるという理由から、産業廃棄物の中でも特に厳しい管理が必要な特別管理産業廃棄物(廃石綿等)に分類されます。この分類は、通常の産業廃棄物と比較して、運搬・処分において非常に厳格な規制が課せられます。
- 二重梱包と表示: 除去された石綿石膏ボードは、破損しないようにプラスチックシートなどで二重に厳重に梱包され、「廃石綿等」や「アスベスト含有産業廃棄物」である旨の表示が義務付けられています。
- 専用車両での運搬: 運搬には、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者が専用の車両を使用し、マニフェスト(産業廃棄物管理票)に基づき厳格に管理されます。
- 最終処分: 処分は、最終処分場の中でも特別管理産業廃棄物の埋め立てが許可されている遮断型最終処分場で行う必要があります。処分場では、飛散防止措置を講じた上で、他の廃棄物と区分して埋め立てられます。
この厳格な処分プロセスを無視して、通常の産業廃棄物として処理しようとすることは、法令違反となり、罰則の対象となります。発注者は、契約する業者が特別管理産業廃棄物の取り扱い許可を持っているかを必ず確認する必要があります。
石綿石膏ボードの除去工事における安全管理と成功事例
石綿石膏ボードの除去工事を成功させるには、単にボードを取り外すだけでなく、石綿の飛散を確実に防ぐための安全管理体制が最も重要になります。これは、法令を遵守し、作業者や周辺住民の安全を守るための企業の責任です。適切な対策を講じれば、石綿石膏ボードの撤去は安全かつスムーズに行うことができます。
石綿石膏ボード除去で失敗しないための業者選びのチェックリスト
石綿石膏ボードの除去は、専門性の高い作業です。失敗を避け、適正な工事を行うためには、業者選びを慎重に行う必要があります。以下のチェックリストを参考に、業者を選定してください。
- 「建築物石綿含有建材調査者」の在籍: 資格を持った調査者が在籍し、適正な事前調査を実施できる体制にあるか。
- 特別管理産業廃棄物の許可: 石綿含有物を特別管理産業廃棄物として収集運搬・処分する許可を保有しているか。
- 豊富な実績と専門性: 石綿石膏ボードを含むレベル3建材の除去実績が豊富にあるか。特に湿潤化や隔離養生の具体的な実績が重要です。
- 見積もりの透明性: 見積書に、石綿調査費、養生費、処分費などが明確に分類されて記載されているか。一式計上でごまかされていないかを確認してください。
- 法令遵守への意識: 作業計画書や届出書を適正に作成・提出する法令遵守の意識が高いか、担当者とのコミュニケーションを通じて確認してください。
デメリット(経験の少ない業者を選んだ場合):
- 飛散リスクの増大: 湿潤化や養生が不十分な場合、石綿粉じんが飛散し、近隣住民や作業員が健康被害を受けるリスクが高まります。
- 不法投棄のリスク: 特別管理産業廃棄物としての処分が適切に行われず、不法投棄につながり、発注者も責任を問われる可能性があります。
- 工期の遅延と追加費用: 調査不足により工事中に石綿が発覚し、計画が中断して工期が大幅に遅延したり、予期せぬ追加費用が発生したりします。
- 罰則の適用: 石綿に関する法令(大気汚染防止法、廃棄物処理法など)に違反した場合、行政指導や罰則が適用されることになります。
石綿石膏ボードの石綿飛散を最小限に抑える具体的な作業手順</h3>
石綿石膏ボードの除去作業は、レベル3の作業基準に基づき、以下の手順で石綿飛散を最小限に抑えながら安全に行われます。
- 作業計画の策定と届出: 事前調査結果に基づき、作業手順、養生方法、使用する保護具などを定めた作業計画を策定し、行政に届け出ます。
- 作業区画の隔離と養生: 作業区画を非作業区画から完全に隔離するために、プラスチックシートで二重に養生し、作業区画外への粉じん流出を防ぎます。
- 作業前の湿潤化: 撤去する石綿石膏ボードの表面に水溶液や固化剤を噴霧し、石綿繊維を湿らせて飛散しにくい状態にします(湿潤化)。これが飛散防止の最も重要な手順です。
- 手作業による丁寧な撤去: 電動工具の使用は避け、手作業や手動工具を用いて、ボードをできるだけ原型を保ったまま慎重に取り外します。
- 二重梱包と排出: 撤去した石綿石膏ボードは、現場でプラスチックシートで二重に厳重に梱包し、破袋がないことを確認してから作業区画外に搬出します。
西日本アスベスト調査センター(NARC)では、これら全てのプロセスにおいて、法令遵守と安全管理を最優先しています。
まとめ
この記事では、「石綿 石膏ボード」に焦点を当て、その基本的な知識から、他の石綿建材と比較した危険性のレベル、最新の法規制に基づく調査義務、そして適正な除去・処分にかかる費用相場まで、専門的な知見に基づいて詳細に解説しました。
石綿石膏ボードはレベル3建材であり、通常使用時の飛散リスクは低いものの、解体や破壊時には石綿が飛散し、健康被害をもたらすリスクがあるため、特別管理産業廃棄物として厳格な取り扱いが必要です。解体・改修工事を発注する施主様や業者の皆様は、必ず建築物石綿含有建材調査者による事前調査を実施し、特別管理産業廃棄物の許可を持つ信頼できる専門業者に除去・処分を依頼することが、法令遵守と安全確保のために不可欠です。
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